No.34 「コンスタンティヌス1世」

榎本海月の連載

「大帝」と呼ばれた男

コンスタンティヌス1世もまたここまで紹介してきたローマ皇帝の一人だが、彼には「大帝」という称号がある。なぜなら、ヨーロッパ史を見た時に、偉大な業績を残しているからだ。それはキリスト教の国教化である。
古代ローマ帝国の歴史において、キリスト教はしばしば弾圧の対象になってきた。以前紹介したネロの時代などはまさにそうだ。しかし、3世紀になるとキリスト教の勢力は大いに高まり、特に広大なローマ帝国のうちギリシャなどを含む東方地域においては無視できない存在となっていた。
また、五賢帝の時代から100年余りが経過したこの時代には別の問題も起きていた。帝国領土を一人の皇帝では支配できなくなり、2人の正帝と2人の副帝、すなわち4人の皇帝によって統治する体制がとられていたのである。そんな中、西方副帝であるコンスタンティヌス1世が頭角を表し、ひさしぶりに1人の皇帝が立って帝国を統治したのがコンスタンティヌス1世の時代であった。
彼はローマ帝国で巻き起こった内乱においてローマへ攻めこみ、ミルウィウス橋の戦いで勝利した。その時、空にキリストの頭文字からなる十字架の幻を見て、神の加護を確信した……と伝説は語る。その後、前述の通りキリスト教の公認を宣言し、また帝国の東方部分も制圧して、己の名を冠した巨大都市コンスタンティノープルを築き上げた。この都市はのちに東ローマ帝国の首都として長年にわたる繁栄の拠点になり、さらにオスマン帝国に攻め落とされた後はイスタンブールとして、変わらぬ偉大な姿を見せている。

皇帝は神を見たのか?

キャラクターのモチーフとしてコンスタンティヌス1世に注目するなら、やはり「キリスト教を公認した皇帝」というところが第一のポイントになるだろう。彼は真に神の加護によって戦いに勝利し、それ故に「正しい」教えに目覚めたのだろうか。それとも、あくまで実利的に「キリスト教徒を味方にした方が有利だ」と考えたのだろうか。また、そもそもローマ軍人(そしてコンスタンティヌス1世も)は太陽神ミトラスの教えと親和性が強く、この信仰はキリスト教とも近かったので、キリスト教を受け入れるのに抵抗が少なかったという説もある。
物語的にはなんらかの陰謀や奇跡、事件がコンスタンティヌス1世(の立場のキャラクター)に影響を当てたと考えるのが面白い。工夫の余地がありそうだ。


【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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