Q.「大きい話」を作ることができません

榎本海月のライトノベル創作Q&A

A:大きな事件を目指しましょう

ここでいう「大きな話」というのは、物語のスケールのことではありません……いえ、ちょっと関係はあるのですが、それが本質ではありません。つまり、「本一冊分以上の長編になるような物語を作ることができない」という悩みです。
これ、人によってはなんのこっちゃわからん、となる悩みではないかと思います。お話はどんどん自分の中から湧き出して、むしろ一冊分にまとめることができない、という悩みを抱えている人も多いのではないでしょうか。しかしその一方で、長編のような大きな話を作れない、という人も実は結構多いんです。
一つの解決法は、物語のスケールを上げることです。つまり、長編になるような話が作れない人の多くは、「小さな事件」しか作れないからそうなっているケースが多いのです。小さな事件は掘り下げようがなく、広げようがなく、短い話で終わってしまいがちですからね。
であれば、「大きな事件」にしましょう。一番わかり易いのは、主人公に降り掛かってくる苦難を、迫りくる危機を、立ち向かわなければいけない障害を、大きなものにしましょう。守らなければいけない仲間、自分の心、財産などもより重要なものにしてみましょう。
キャラクターを増やすのもこれに準じる手法ですが、本来書きたかったことが埋もれてしまう可能性があるので、使うのはちょっと覚悟がいります。

A:短編連作に挑戦しましょう

どうしても一つの物語で「大きな物語」にすることができない、という人もいます。大きな物語を想像できなかったり、あるいは書きたいものがどうしても「小さな物語」の方によってしまう人ですね。これはある程度仕方がないところなので、そのうえで「ではどうするか」を考えなければなりません。
榎本メソッドではこういう時、短編連作に挑戦してみませんか、とアドバイスしています。つまり、まず短編を書くんです。そのうえで、この一作目とキャラクターや舞台、テーマなどを深く共有する次の作品を書くんです。
そうして二作、三作、四作、五作と書けば、大体の人は長編一作分に匹敵するくらいの分量を書き終えているはずです。さあ、長編を書けたじゃあありませんか。これが、小さい物語しか書けない人が大きな物語を書く方法です。
ただ、短編を連ねただけではちゃんとした短編とはいい難いところがあります。プロを目指すのであれば、ここからもうワンステップ。五つの短編に共通するテーマであったり、三つの物語をとおしての主人公の成長だったり、四つの物語が起承転結の構成をしていたり、という具合です。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース(https://www.ndanma.ac.jp/nma/course/novel/)】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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