No.35 「オーディン ―魔術、嵐、戦士の神」

榎本海月の連載

魔術の神、嵐の神

オーディンは北欧神話における主神である。彼はアース神族と呼ばれる集団の長であり、そこに所属する神々は基本的にオーディンの子だ。
オーディンは数々の能力としもべを持つ、非常に強い神であると信じられた。魔術の神として有名だが、その魔力と知識は自らの片目を捧げ、また己の体を槍で貫いて木に吊るすという荒業の結果得られたものであるという。他にも嵐の神であると信じられたり、さまざまな動物に変身することもできたとされる。
持ち物も特別で、グングニルの槍は日本のエンタメにもしばしば出てくるので名前を聞いたことがある人も多いだろう。他に8本の足を持つ馬スレイプニルや、数が増える黄金の腕輪ドラウプニルを有した。
その住まいはヴァルハラと呼ばれる天上の宮殿であり、そこにある玉座から世界中を見ている。また、二匹のカラスがオーディンの目として世界中を見張っているし、ワルキューレと呼ばれるしもべたちに良い戦士を探させ、彼らが死ぬとヴァルハラへ迎え入れた。
北欧の戦士は自分たちの戦いはオーディンが見ていると考え、神の恩恵が得られれば勝利を、逆に神が敵につけば妨害を受け敗れてしまうと信じたのである。その上で、戦いの中で倒れ、神とワルキューレに評価されてヴァルハラに招かれ、いつか来たるラグナロク――最終戦争の日に活躍することを夢みた。

戦士の神

どんな神を信じるかは、民族や地域の雰囲気と密接に繋がっている。穏やかで平和な地域では、自分たちに豊かな実りと安全をもたらしてくれる神が見守っているのだと信じるだろう。荒野に住む人々は、厳しい神が自分たちに試練を与えてくれる(しかし滅びないように守ってくれる)と考えるはずだ。そして、北欧の戦士たちが信仰したオーディンは、雄々しく戦って死を恐れないものを祝福するという属性を有する。このように、あなたの設定する地域に相応しい神を用意したいところだ。


【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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