No. 13「ポセイドンのトライデント」―海神の武器

榎本海月の連載

ポセイドン

ファンタジー作品で人魚や水棲人類が出てくると、しばしば武器として登場するものがある。それがトライデントだ。矛(あるいは銛)の一種なのだが、先端が三つに分かれている。ギリシャ語を翻訳すると「トライ」は3、「デント」は歯で、「3本の歯(を持つ武器)」ということになるわけだ。
どうしてトライデントが水の中で生きるファンタジックな人々と結びついたのか。それはギリシャ神話においてトライデントが海神ポセイドンの持ち物として描かれているからだろう。
ポセイドンはゼウスの兄弟であり、彼とともに父・クロノスと戦った。トライデントはその戦いに際して、巨人・キュクロプスがポセイドンのために鍛えたものである。この時、ゼウスには雷霆(ケラウノス)、またもうひとりの兄弟であるハデスには隠れみの魔力のある兜が与えられた。
クロノスとの戦いの後、ゼウスとポセイドン、ハデスの三兄弟は世界を三つに分けて支配することにした。ゼウスは天界、ハデスは冥府、そしてポセイドンは海だ。彼が海神となったのはそれ以降のことである。
なお、トライデントには不思議な力があった、という話がある。ポセイドンが力つき士気を失ってしまった兵士の頭にトライデントで触れると、彼らは戦意を取り戻した、というのだ。

なぜ矛?

ポセイドンの武器が剣や棍棒の類でなかったのは、彼が海の神だからだろう。水中で使おうとすると、振る武器はどうも具合が悪い。水の抵抗で動きが鈍くなるからだ。しかし、槍や矛、銛といった突き刺す武器は水の抵抗を受けにくく、使い勝手が良い。このように、神や伝説の英雄の武器は、彼らの支配領域やバックボーンと合致した種類のものを選択すると、雰囲気が出る。


【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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