No.48 「エルナン・コルテス ―神と間違われた征服者」

榎本海月の連載

典型的なコンキスタドール

エルナン・コルテスは「コンキスタドール」、つまり国王の認可を受けて南北アメリカ大陸の征服に従事したスペイン人の一人であり、インカ王国を征服したピサロと並んで中でも最も有名と言っていいだろう。
スペイン下級貴族の生まれである彼は18歳でアメリカに渡り、キューバやメキシコの征服に従事した。やがてスペインのキューバ総督ベラスケスと対立し、彼の攻撃を退けながらメキシコのアステカ王国と戦うという困難な状況へ追い込まれる。しかしコルテスはこの難事を達成し、ついにアステカ王国を滅ぼしてしまう。
この時に先住民族インディオを虐殺したこと、またアステカ文化を破壊したことは後世大いに非難されたが、コルテス自体は意に介さなかっただろう。なぜなら彼は熱心なキリスト教徒であり、インディオたちを積極的に改宗させていくような、典型的なコンキスタドールだったからだ。神の栄光、ヨーロッパ文明の優越性を心から信じていたに違いない。なお、彼のそのような振る舞いを称して「新大陸のモーゼ」と呼んだ、と伝わる。
アステカ王国征服の功績によって、コルテスは一度はメキシコ総督に任ぜられた。結局役人たちと対立してしまい、スペインに戻って国王に己の正当性を訴えるもうまくいかず、結局のところ公的なメキシコの統治者ではいられなくなったようだ。以後、彼は砂糖の生産業や南アメリカ大陸の更なる探検などに従事したものの、やはりうまくいかず、最後はスペインで死んだ。その遺体はメキシコに埋められたという。

白人は神だった!?

コルテスについては面白い話がある。当初、インディオたちはコルテスら白人を神と崇めたというのである。というのも、彼らの奉ずる神ケツァルコアトルが白い肌をしていたとされていたからだ。だからアステカの王はコルテスに一度は「国を返す」と言ったらしい。コルテスがそのような信仰につけ込んだのは間違いなく、あなたの物語でモチーフとして取り込めそうな話ではないか。


【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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