第0回「連載の目的 ~どうして「いま」と「むかし」?~」

ファンタジーを書くために過去の暮らしを知ろう!

文化が暮らしを変え、暮らしが考え方を変える

今回からの連載は、「いま」と「むかし」を比較しながら物語を作る時に注意するポイント、発想のヒントになりそうな情報を紹介していきます。
なぜそのようなことを知る必要があるのでしょうか。それは、「いま」と「むかし」では私たちの生活や暮らしが大きく変わっているからです。そして、生活の変化は価値観や行動の基準にも深く関わってきます。なので、知っておいたほうが便利なのです。
もう少し、具体的に紹介してみましょう。生活の変化が価値観を変える例としてわかりやすいのは携帯電話の出現でしょうね。今、皆さんは「どこでも誰かと連絡を取れる」のが当たり前、「知りたいことがあったらすぐ調べられるのが当たり前」と思っておられるはずです。
でも、つい2-30年前、そんなのは夢物語でした。電話といえば自宅か公衆電話で、外出中に向こうからかかってくるなんてことはまずありませんでした(一応公衆電話にかけることはできるんですけどね。あと、行きつけの喫茶店に電話がかかってきて……なんて話も聞いたことがあります)。
これは仕事などの点で非常に便利なのですが、一方で束縛されている、ということでもあります。スマホの電源を切ればいいのですが、その場合も「なぜ出ないのか」「やましいことでもあるのか」って話になりますよね。今の時代が皆急いでいて焦っているように感じられる背景に、このような携帯電話の存在があるように思うのです。
このように、新しい技術が現れたり、古い文化が失われたりすると、生活が変わり、価値観が変わり、行動が変わります。

変わるもの、変わらないもの

もちろん、同じ人間だから本質的には変わらない、ともいえるでしょう。さらにいえば、あんまり変えてしまうと読者が共感できない、応援したくなりにくい、という問題もあります。たとえば過酷な世界で生きている少年が簡単に人殺しなどをするのは、正しい行動であるのでしょうが、現代を生きる私たちとしては素直に賛成はできないものです。
しかし、だからといってまったく「現代感覚」で書くのでは、せっかく現実と違う世界を書く意味がなくなってしまいます。なので要所要所を押さえていただきたい……ということで、そのヒントを紹介するのが本連載の目的なのです。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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