No.8 「ナイチンゲール」

榎本海月の連載

天使と呼ばれた女性

ナイチンゲールは「天使」と呼ばれる人だが、実像を調べてみると驚くかもしれない。彼女はその別名から想像されるような柔らかい印象の人ではないからだ。
ナイチンゲールはイギリス人の裕福な両親の元で生まれた。「フローレンス」という名はイタリアのフィレンツェに由来し、両親がここに滞在している時に生まれたことから来ている。
幼い頃から病人に接し、看護、衛生、社会問題に強く関心を持っていた。この時代の看護師は現在のような重要性を認められず、召使いのように雑用を行う存在とみられていたが、彼女は正規かつ高度な訓練を受け、看護師が必要であると強く感じるに至った。
特にクリミア戦争において、陸軍病院の衛生条件が非常に劣悪だったせいで伝染病が発生し続ける中、多数の看護師とともにこれを改善したことで知られている。結果、数か月で死亡率が半減したため、「クリミアの天使」と呼ばれるに至った。
その後、ロンドンでは聖トマス病院にナイチンゲール看護学校を設立し、看護婦の社会的地位を向上させただけでなく、看護と宗教を切り離した(古来、医療と宗教は深く結びついていることが多かった)ことも重要だ。看護師の象徴的存在としてその名は今でも有名である。
クリミア戦争での看護が過酷だったせいか長く病の床についたが彼女のバイタリティは衰えず、数多くの著作を敢行し、看護・衛生・婦人問題だけでなくイギリス陸軍の改革にまで言及している。

意思を貫く

ナイチンゲールは、強い意志を持ち、外交手腕に長けたキャリアウーマンだった。彼女の本分は現場での献身的な看護よりも、改革、改善にあったと考えるべきだろう。ナイチンゲールは衛生環境の悪かった医療現場の改革、女性は働く必要はないという当時の常識と戦い改革をしていった強い女性だったのである。


【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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