No.5 「チンギス・ハン」

榎本海月の連載

モンゴル帝国のハン

ユーラシア大陸の東西にまたがる大帝国を築き上げた偉大な王。若い頃の名はテムジン。いわゆるジンギスカン鍋は彼の名前から。
彼が生まれたのはモンゴルの遊牧民の中でも名門と呼ばれる部族で、東からやってきた青い狼と白い雌鹿の子孫であるという伝説があった。しかし父が毒殺されたせいで若い頃は貧しく、近隣の大勢力に従って力を蓄えた。やがてモンゴル氏族連合の盟主となる(チンギス・ハンの称号を贈られたのはこの時)と躍進を開始。敵対勢力を次々と倒すとモンゴル帝国のハン(皇帝)になった。
彼の野心はモンゴルだけには収まらなかった。当時、中国には北方を支配する金(満州族、女真族)とこれに圧迫された宗があったが、モンゴル帝国は金へ侵入。北京に入った。彼の死後もモンゴル帝国の勢力拡大は続き、金や宋を滅ぼしたのはもちろんのこと、西にも広がって、中央アジアから北西インド、南ロシアにまたがる、世界史においても例を見ない大帝国となったのだ。
チンギス・ハンの治世は残虐さと寛容さが共存していた。多数の人を殺し、女性を犯す残虐な振る舞いをし、また工芸家や職人を捕虜として連れ帰った一方で、宗教的には自身がシャーマニズムの信奉者であったにもかかわらず他の宗教に寛容であった。
彼の死後もモンゴル帝国は残ったが、やがて代を重ねる中で分裂し、その巨大さを失っていく。日本に二度にわたって侵略を仕掛けた「元」はそうして分裂したモンゴル帝国の一つである。

恐ろしくも魅力的な「外敵」

チンギス・ハン的な王が物語に登場するのであれば、それは主要舞台となる地域や世界を脅かす「外敵」であることが多いのではないか。主人公たちとは違う価値観や方法論を持ち、恐ろしいが決して交渉不可能ではないはずだ。だが、根本的な違いが結局は戦わざるを得ないという結論に導くのかもしれない……。恐ろしくも魅力的な、カリスマ的人物として登場させたいところである。


【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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