No.52 空知英秋『だんでらいおん』

榎本海月の連載

空知英秋『だんでらいおん』(集英社、『銀魂』1巻(2004)収録)
初出:『週刊少年ジャンプ』(2002)

天使たちのドタバタ劇

作中の現代日本には天使がいる。彼らの仕事は彷徨える魂をあの世へ送ることだ。……ここまでいえば翼に羽のある美しい天使を想像する人がほとんどだろう。しかし、本当の彼らは全く違う。黒いスーツの、普通の人間にしか見えないのである。
しかもあの世へ送るための武器は銃。そして何より、「組」に分けられた天使たちはどいつもこいつも口が悪い――。個性豊かな天使たちのドタバタ劇と、想いもよらぬところからしんみりさせてくる人情劇が見事な組み合わせになっている作品だ。
本作はつい最近『銀魂』を完結させた著者の商業デビュー短編である。『銀魂』1巻に収録されているので、上映中のアニメ映画最終章を見るついでにこちらも読んでみてはいかがだろうか。

剥き出しの作家性

以前も紹介したが、大ヒット中の作品よりも、むしろその作者の初期の作品にこそ作家性が現れることがある。荒削りな時代にこそ、作者の味、一番描きたいものが見えることがよくあるからだ。
この『だんでらいおん』の場合はどうか。実は、作品として目立つ部分は何も変わっていない。『銀魂』でも遺憾無く発揮されている超ハイテンポのボケツッコミ、口汚いやり取りが作中にも十分に見ることができる。なお、このやりとりは著者の出身地である北海道の訛りなので、大人気バラエティ「水曜どうでしょう」などと見比べてみても面白い。

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だんでらいおん銀魂 1巻収録)』 honto 紀伊國屋書店


【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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