◇15回「さしたる用もなかりせば」

榎本海月の物語づくりのための黄金パターン+α

義経突然現れて……

今回はちょっとダメなパターンを紹介する。今となっては想像しにくいところがあるが、かつて源義経はスーパースターだった。なにしろ悲劇の超人ヒーローですから人気が出るのはそりゃ当然なのだが、江戸時代などは「人気の出過ぎ」になっていたようだ。
つまりどうなるかというと、全く関係のない芝居に義経が出てくるのだ。「義経と関係ない芝居を義経主役にする」ならまだわからなくもないが、そうですらない。話の筋を完全に無視して義経が出てきて、「さしたる用もなかりせば、これにて御免(特に用事はないからこれで帰ります)」と行って帰っていくのだ。
これを観客が喜んだというから恐ろしい。つまり物語とは全く関係のないところで「とにかく義経を見たい、義経を見ないと芝居を見た気がしない」という需要があった、ということなのだ。

「さしたる用もなかりせば」要素

さて振り返ってみて、皆さんの物語に「さしたる用もなかりせば」になっているキャラクターや要素はないだろうか? つまり、とりあえず人気が出そうな要素、出してみたい要素を思いついて投入したはいいけれど、物語上特別な意味を持たせられなかったものはないだろうか?
義経程度の、意味がないとはっきりしている出番であればさほど気にならないかもしれない。しかし、読者が「これはもしかして重要なのでは」と勘違いしてしまうと、誰にとっても不幸

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【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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