♠12回「火事に正しく対処する対応・描写は?(2)」

榎本海月の物語に活かせるトラブル&対応事典

避難するためには

初期消火の段階を超え、天井まで移るような火になってしまうと、素人の手には追えないので、もう逃げるしかないことがほとんどだろう。
可能であれば消防署にしっかり通報したい。119番に電話して、火事であること、発火現場がどこか、今どのような状況なのか、自分は何者なのか。きちんと情報が伝わらないと、消防隊の到着が遅れる恐れがある。
だが、最も気をつけなければいけないのは自分の安全だ。ここで「確かに火は熱いけれど今自分のいるところには来ないよ」とたかをくくってしまうのは大変良くない。火事で怖いのは煙なのだ。
熱い煙やそこに含まれるススを吸い込むと喉を火傷して息ができなくなる可能性がある。それどころか、煙を吸い込むことで一酸化炭素中毒になってしまうと、あっという間に気を失うかもしれないのだ。他にも、化学繊維の布が燃えて発生するシアン化水素(いわゆる青酸ガス!)なども吸うと死につながる可能性が高いので怖い。そこで、火事からの脱出にはなるべく身を低くして煙を吸わない、という注意が必要になる。
この時、一昔前ならハンカチやタオルなどを濡らして口に当てると良い、とされてきた。そうすることで煙を吸う度合いを下げるとされてきたのだが、近年の研究ではあまり意味がないと考えられるようになった。濡らしても濡らしてなくとも効果は変わらず、むしろ水を用意する手間で逃げられなくなる可能性が高まってしまうのだ。実際には、濡れていなくてもいいから何らかの布で口を覆えば良い。
なお、ここまでは室内での火事をイメージしていたが、地震などをきっかけに外で大規模な火災に巻き込まれてしまうこともあるかもしれない。そんな時は風上に向かって逃げると安全を確保しやすい。しかしこのようなケースでは町中がパニックになっているだろうから、人の波に巻き込まれない注意の方が重要だろう。

フラッシュオーバーとバックドラフト

何かの事情でどうしても燃え盛る建物の中で活動しなければいけないこともあるかもしれない。その時に気をつけるのはフラッシュオーバーとバックドラフトだ。
どちらも炎の勢いが急激に変化する点では同じだが、別種の現象である。
フラッシュオーバーは火事のせいで引火性のガスがその空間に溜まってしまい、それが熱のせいで引火、一気に炎が広がってしまうこと。バックドラフトは一見すると炎が静まったような室内(実際には一酸化炭素が溜まっている)にドアを開けるなどして新鮮な酸素を送り込むと、爆発的に燃えてしまう現象のことだ。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース(https://www.ndanma.ac.jp/nma/course/novel/)】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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