Q.一つの作品にこだわるのと、新しい作品色々書くの、どっちがいいですか?

榎本海月のライトノベル創作Q&A

A:こだわりすぎると辛いことがあります

ここでいう「一つの作品を」というのは、二つの意味がありますよね。一つは、ある物語をずーっと書き続けることで、もう一つは仕上がった作品を何度も直し続けることです。
もしあなたが自分の好きなように作品を書き続けたい人なら、別にダメということはありません。書きたい作品を書きたいように書けばいいので、前者も後者も止められる筋合いはありません。
でも、もしあなたがプロ作家になりたいなら、一つの作品を書き続けるのは、どちらの意味であってもおすすめできません。
まず、一つの物語をずっと追いかけることのマイナス面を説明させて下さい。学校にもたまに「昔から温めてきて書きたかった話がある」と言ってやってくる人がいるのですが、その作品をきっちり書き終えたケースは殆ど見たことがありません。
どうも、温め続け、思い入れが強くなりすぎてしまうことが悪い方向に行き過ぎるようなのです。結果、アイディアやキャラクター、エピソードが膨れ上がりすぎて長編一本分に収まらなかったり、ウェブ小説で連載しようにも長年考えすぎたせいで読者を置いてけぼりにしてしまったり、という方向に行きがちなのです。
そうでなくとも、発想力を養い、視野を広くするためには、生産力が許す限りなるべく色々なタイプのお話を書いて見ることをおすすめします。

A:直し続けるよりも……

さてもう一つは、一つの作品を何度も手直しするタイプの人です。これも気持ちはわかります。思い入れが強かったり、あるいは一つの作品をいろいろな賞に送って受賞確率をあげようという人です。
特に後者の方法などは一見すると効率が良さそうに思えますが、正直なところあまりおすすめできません。結局、修正して面白くする方法には限度があるのです。むしろ直したせいで面白さを失ってしまった作品なども見たことがありますしね。
また、新人賞の下読み担当の人たちもプロですから、落とすときにはきっちり理由があって落とします。その作品を何度も何度も送って、いい結果が出る可能性は高くありません。むしろ、何度も落選通知が来ることで書き手であるあなたの心が折れてしまうほうが私は心配です。
そんなことをするよりも、落ちたら切り替えて新しい作品をどんどん作っていったほうが、結局はレベルアップにもつながっていい、と私は思うのです。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース(https://www.ndanma.ac.jp/nma/course/novel/)】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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