それは悪しき完璧主義
生徒さんからたまに聞かれる、或いは生徒さんが口にはしないけれど明らかに考えていることがわかる問いかけがある。それは「プロット段階で完全なものを作れば、ストーリーの推敲や後からの削除・書き足しなどは不要では?」だ。
気持ちはすごくわかる。しかし、残念ながらこれは私が何度か触れたことのある「悪しき完璧主義」の現れというもので、プロット段階から完全なものを目指すのはよろしくない。結局のところ手を抜こうとしているだけ(修正の手間を省きたいだけ)で、しかも実際には完璧なプロットなどというものは作れないから、プロット作りに必要以上に時間がかかったり、納得いかなくて次の段階に進めないのがオチだ。
直すことを前提に考えよう
ある程度創作に慣れてくると、この辺りのカンも掴めてくる。結局のところ、プロットはある種たたき台程度の考えた方が良く、書いていく中で「こっちの方がいいな」と思ったり、自分が把握できていなかった部分が「なるほど、こういうものなのか」と見えてくることがどうしてもあるものだ。
また完成後の修正についても、単に誤字脱字を直すのにとどまらず大きく削ったり書き直したりということも、実は珍しくない。そうすることによってバランスを調整するのだ。ここで「完成後もまだやるのか」と考えてしまうと辛いので、「そういうもの」「書き上げてからが本番」くらいに思うことをお勧めする。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。