A1:会話文と地の文のバランス
多くの小説家志望者が苦しんでいる問題の一つが「会話文と地の文のバランス」だろう。会話文が多すぎると伝えたいことが伝えられなかったり、リズム・テンポの起伏がつけられなかったりする。逆に地の文が多すぎると堅苦しくなりすぎる。
このバランス問題に絶対の正解というものは残念ながらなく、書き手が自分の理想を目指して微調整を続けるしかない。ただ、お手本・見本になる書き手を見出し、その作品を模写することで自分なりの理想を探すのはお勧めの方法だ。
そんな中で、「地の文での説明が長すぎるがうまく削れない」という悩みを抱えている人もいる。こんな時、どうしたらいいのだろうか?
A1:地の文を活用するために
小説で読者に情報を伝えるために一番効率的なのは、地の文を活用することだ。これは漫画にもアニメにもない小説だけのアドバンテージである。しかし、地の文を長くしすぎると読者にとっては負担になることがある。であれば、地の文ではないもう一つの文、つまり会話文を活用するのが良い、ということになる。
一番おすすめなのは、「キャラクターの感情や心情などをいちいち地の文で書かず、会話文で表現するようにする」ことだ。「誰々は怒った」などと書かず、「お前、ふざけんな!」とセリフで表現するわけだ。もちろん、両者を組み合わせても良い。怒る台詞と「まなじりを吊り上げた」という地の文を組み合わせることで、情報量を倍加することができる。
ただ、「地の文で語れる情報をキャラクターに喋らせる」は一長一短なので注意した方がいい。まず単純に「情報は地の文の方が圧縮・効率的に伝達できる」という事情が一つ。加えて、キャラクターに喋らせると妙な長台詞になったり「なんでこのキャラクターはわざわざこんなこと説明しているの?」と不自然になったり、ということがあるからだ。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。