No.79 「ランスロット ―円卓最強、「湖の騎士」」

榎本海月の連載

「湖の騎士」

ランスロットはアーサー王に仕えた円卓の騎士の中でも最高の騎士と謳われた人物である。父親はアーサーの同盟者のひとりだったが死に、ランスロットは湖の妖精に育てられたのでふたつ名を「湖の騎士」という。同じ円卓の騎士のガウェインと並び称される騎士であった。
ランスロットは武勇に優れただけでなく高潔で優しい人であり、正義へのこだわりが強い人でもあった。一方で出身がフランス、つまり外国人だったため、アーサー王の宮廷の中で疎外感を得てもいたかもしれない。そのせいか、彼は許されぬ恋をしてしまう。その相手はアーサーの王妃グィネビアである。この恋が彼らとブリテンを破滅させることになる。
ランスロットのエピソードとして有名なものとして「荷車の騎士」の物語がある。グィネビアが騎士に誘拐され、ランスロットが追いかける、というものだ。この時彼にはいくつもの試練が降りかかり、その一つが「騎士として相応しくない荷車に乗ってまで追いかけるか?(理想と目的のどちらを取るか?)」だったのでこの名前がついている。ランスロットは数々の試練を乗り越え、ついにグィネビアを取り戻したが、肝心の王妃はランスロットが荷車に乗り込むのをわずかに躊躇したのでその愛を疑った……というなんとも苦いオチがつく。
やがて破滅の日がやってくる。ランスロットとグィネビアの不倫が明かされるのだ。ランスロットは不貞の罪で処刑されようとしていた彼女を救うために、ガウェインの弟たちを殺してしまい、いよいよ追い詰められる。円卓の騎士がアーサー派とランスロット派に分かれて争う中、ブリテンではモードレッドが反乱を起こす。ランスロットは苦悩の末にアーサーを救おうとするが間に合わず、失意のうちに僧侶となってその後の人生を送ったという。

悲劇のイケメン

ランスロットは円卓の騎士の中でも特に人気のあるキャラクターのひとりだ。強く優しく美形と伝えられるので当然と言えば当然だが、それに加えて「ロマンスの中で破滅していく最強の男」というあたりが、多くの読者を惹きつけたらしい。皆さんもイケメン的キャラクターを描くのであれば、ランスロットはいい手本になるはずだ。


【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

タイトルとURLをコピーしました