No.63 「ラー」

榎本海月の連載

エジプトの偉大な太陽神

ラーはエジプト神話における太陽太陽神であり、主神に位置づけられる神である。
エジプト神話には原初の水と呼ばれて巨大な球体の姿をしていた神ヌンと、そこから自ら生まれて世界を世界を作った創世神アトゥンが存在する。そしてラーはこのアトゥンと同一視されることもあって、エジプト神話で最も偉大な神と見做されるに至ったという。
このように偉大な神であるが故に、ラーは古代エジプトの王=ファラオとも一時期結びついたことがある。ファラオはラーの息子であり、神の権威によってエジプトの地を支配するという理屈でその権威を強化した、というわけだ。ラー信仰が王権と直接結ぶついた時期はそう長くはないようだが、その後のエジプトには大きな影響を与えた。
ラーの特徴で最も有名であろうものは毎日の航海である。太陽である彼は、毎日生まれ変わり、昼の間は船にさまざまな神々を乗せて空を行く。そのとき、邪悪な蛇アポビスと戦い、世界を救う(ラーが負けるときもあり、その場合は日が陰ってしまうと伝わる)。しかし、その旅も時間経過によって終わる。ラーは昼の終わりと共に老いて死に、夜がやってくるのだ。死んだラーはもう一度、今度は冥府の旅をする。この期間が夜だ。太陽神の生と死を通して1日が始まって終わり、エジプトの歳月は巡っていくのだ。

偉大な王から老いた王へ

このように偉大な神であり人々に信仰されたラーだが、時代が進んでいくと単に偉大な王というよりは「かつて偉大だった王」「老いた王」という視点で見られることが多くなったようだ。つまり、彼に代わって立った別の神こそが物語の主役であり、ラーは主役交代をされる側……というわけだ。これは地上の王国における信仰の移り変わりを反映している。
しかしそのような流行り廃りとはまた別にラーの信仰はエジプトで長く続き、太陽であるラーが見守ってくれているのだと人々は信仰した、という。このような「もはや大きな神殿はなく、主流の信仰ではないが、しかし人々に広く信じられている」神というのは、あなたの世界に地に足のついた説得力を与えるのに向いていると思うのだが、いかがだろうか。


【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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