No.28 「ロムルス」

榎本海月の連載

狼に救われた双子

今回からしばらくは古代ローマにまつわる人物を紹介したい。ローマはしばしばファンタジックな国家やその世界でかつて栄えた古代帝国のモチーフになるなど、ネタ元として使いやすいからだ。
ローマの歴史はその祖としてひとりの神話的英雄の名前を掲げる。ロムルスだ。彼の名前こそがローマのルーツであるという。
ローマ人の建国神話によると、まずアルバ・ロンガ王国というギリシャ神話のトロイヤ戦争にも出てくる英雄アイネイアスの末裔の国家があった。そこの王の娘が軍神マルス(ギリシャ神話でいうところのアレス)との間にロムルスとレムスの双子を産んだが、王の弟が玉座を奪い、甥である双子も捨ててしまった。
ところが、双子は死ななかった。狼が命を救って己の乳を与え、のちに羊飼いの手に渡って双子は育てられた。成長した二人は叔父を倒して父を王位に戻す。これでハッピーエンド……とはいかない。むしろ、物語はこれからだ。
 双子は7つの丘がある場所に新たな都市を作ることにした。これがのちのローマになるわけだが、まずどの丘を中心に都市を築いていくかで揉め、神に選択を委ねた。占いの結果としてロムルスが勝ったが、レムスはこれを不服にして争う姿勢を見せた。戦いの結果、ロムルスがレムスを殺して勝利者となり、彼こそがローマの祖となったのだ。
やがてローマ王国がローマ共和国になり、カエサルやアウグストゥスの時代を経て、強大なローマ帝国へつながっていくことになる……。

ギリシャにつながる建国神話

ここまで紹介したロムルスの物語は、概ね後世の創作であろうと考えられている。「ロムルスの名前からローマという都市の名がついた」というのがそもそも逆で、「ローマから逆算してロムルスという英雄の名前が創作された」らしいのだ。ギリシャ神話からつながるルーツが設定されたのも、ローマがギリシャ文化を吸収したことから権威づけのために有効だったためだろう。
あなたの設定する国家では、建国神話はあるだろうか。それはあくまで歴史的事実を元にしているのだろうか、それとも後世に創作された部分を多分に含んでいるのだろうか。


【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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