「万学の祖」
アリストテレスはプラトンの弟子だ。そして、彼に勝るとも劣らぬ業績を残し、のちの時代に大きな影響を与えた大学者でもある。
彼はカルキディキ半島のスタギラという都市に生まれ、プラトンの学園で学んだ。師匠の死後にアテナイを離れ、各地で学者あるいは教育者として暮らした。父が侍医を務めていたことがある縁から、マケドニア王フィリッポス2世の息子の教育を担当したこともある。この若者がのちのアレクサンドロス大王である。
その後はアテナイに戻って学園を開いたが、アレクサンドロス大王が死ぬとマケドニアに近いことから立場が悪くなり、逃れた先で病没している。
アリストテレスの学問上の業績はあまりにも多すぎる。「普遍」と「個別」あるいは「主語」と「述語」などといった用語や概念を確立したことをはじめ、三段論法の発明や、動物学という分野を作り上げたこと、自分の学園に図書館の先駆けとなる施設を作ったことなど……。「万学の祖」という異名は伊達ではないのだ。
超感覚の師匠と現実主義の弟子
キャラクターモチーフとしてアリストテレスを見るなら、どこに注目するのがいいだろうか。何しろ美味しい要素はたくさんある。「万学の祖」はもちろんだが、「アレクサンドロス大王の教育者」という点からもキャラクターがいろいろな形で作れそうだ。
加えてもう一つ、プラトンとの関係にも目を向けたい。プラトンはイデアなど現実・自然を超越した概念・観念の世界にこだわった人であるが、その弟子であるアリストテレスは師匠とは別の方向、つまり現実主義の学問を進歩させた。どちらも偉大だが学問的立場が違う……このような関係性もまた、物語として面白くなりそうだ。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。