No.24 「アルキメデス ―「エウレカ(わかった)!」」

榎本海月の連載

「エウレカ!」

アルキメデスは古代ギリシャで活躍した科学者だ。シチリア島のシラクサに生まれ、故郷のために強力な投石機などさまざまな兵器を発明したとされる。
しかし、彼の名を有名にしたのは、数学的発見とそれにまつわるエピソードであろう。最もよく知られているのは以下のようなエピソードだ。
曰く、シラクサ王が黄金から王冠を作らせたのだが、その製作者に「純金に混ぜものをして、与えられた金を一部ちょろまかしたのではないか」という疑いをかけられた。鋳潰せば真相は明らかになるが、製作者が無罪であれば無意味に芸術品を損なうことになる。そこで王はアルキメデスに知恵を求めた。彼は大いに悩んだが、風呂に入った時に「水中に沈めれば取り除かれる水の量で体積がわかる(アルキメデスの原理)」ことに気づき、王冠と純金を同じように沈めることで体積の違いを見破ったのである。この発見をした際アルキメデスは「エウレカ(わかった、見つけた、などの意味)!」と叫んで裸のまま街を走ったという。
アルキメデスのエピソードはまだまだある。テコの原理に詳しく、「足場さえあれば地球だって動かせる」と主張した話や、シラクサがローマ兵の攻撃で陥落した時も図形を書いて計算をしていて、邪魔するなと訴えたところを殺された話などである。ただ、彼を単にエキセントリックなマッドサイエンティスト的人物として捉えるのは間違いだ。アルキメデスは理論重視の科学者が多かった古代には珍しく、実験・実践と理論構築の双方が重視されるべきと訴えた偉大な科学者なのである。

エキセントリックなだけでなく

アルキメデスはキャラクターモチーフにしやすい人物である。当時の主流から外れて実験や実践に熱心であった点、「エウレカ」の件を始めとするエキセントリックなエピソードが多い点などがそれだ。
アルキメデス的なキャラクターの真っ直ぐさに振り回されたり、実験を手伝わされたり、彼に実践の機会を与えたりと、いろいろな形で物語に登場させることができるだろう。


【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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