No.2 九井諒子『ダンジョン飯』

榎本海月の連載

九井諒子『ダンジョン飯』(KADOKAWA、9巻続刊、2015〜)
初出:『ハルタ』(2014〜)

妹のためにモンスターを食う!

ある島に魔物で満ちた巨大な迷宮がある。その中には“狂乱の魔術師”がおり、これを倒したものにはすべてが与えられるというーーかくして、命知らずの冒険者たちが集まり、パーティを組んでの迷宮探索が始まったのだ。
その中に、兄ライオスと妹ファリンを中心にしたパーティーがあった。彼らは迷宮の奥へ迫るが、レッドドラゴンに襲われファリンが喰われてしまう。彼女の犠牲でどうにか逃げ延びた一行はファリンの死体を回収して復活させようと考えるが、一部メンバーが離脱し、さらに金銭的余裕も無くなってしまった。
どうにかお金を節約しつつファリンの元へたどり着かねばならない。悩むライオスは恐るべき結論を導き出す。「モンスターを食いながら探索すれば節約できる」……嫌がる仲間を無理やり説得し、またモンスター調理の達人であるドワーフのセンシの助けを得つつ、一行の奇妙な探索道中が始まる……。

アイディアのうまさ、キャラ立てのうまさ

「迷宮に挑む冒険者パーティー」という古典的な物語パターンで多くの人になつかしさを感じさせつつ、そこに「モンスターを食べる!」というワンアイディア(しかもアイディア自体は昔からあるが、メインに据えられたことはほとんどないもの)を加えて魅力的な物語に仕立てる、という全体的な構成がまず素晴らしい作品。
ただ、ここまでなら考えたことのある人はいるはず。本シリーズがすごいのは、まず「モンスターはどういう生き物でどう食べられるのか」「モンスターの生態系はどうなっているのか」を深く考えて作ってあること。作り込まれた世界設定が地に足のついた感じを演出しているからこそ、多くの読者を惹きつけたのだ。この点は多くのファンタジーものを書きたい小説家志望者にとってダイレクトに参考になるところだろう。
もう一つ、レベルが高すぎて簡単には真似できないのが群像劇の構成である。パーティー内どころからそれ以外のキャラクターも含めて、各キャラクターの事情・性格・信条・目的がはっきりしていて、それぞれがそれぞれに動いているので、非常に生き生きとした物語になっている。実際にこういう物語を書くのは大変だが、一つの目標としてほしい。

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『ダンジョン飯 1』 honto 紀伊國屋書店


【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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