信じる心が生むもの
信心とは、神や仏を信仰し、敬い、祈り、その教えを守る心のことである。信心深い人とは、そのような心が他人よりも強い人のことをさす。
信心深い人は多くの社会でしばしば尊敬され、頼りになる人として見られる。どうしてかといえば、神や仏の教えは基本的に「他人に優しくあれ」「他人のために自分の汗をかけ」「嘘や殺人、強欲、怠惰のような悪行をなすな」というものであるからだ。他者から見るとこのような教えに従っている人は自分を害しないし助けてくれるものであり、敬うのも当然である。
ただ、そもそも利己的な人間、意地悪な人間にとって、このような人は自分たちが利用するためのカモにしかみえず、辛いこと、苦しいことを教えつけたり、詐欺のターゲットにしたりするかもしれない。
信心深い人はそのような悪意を飲み込むかもしれないが、周囲の人々は大いに気を病むだろう。彼らがうまくフォローして守り切れれば良いが、もしそうでなくすべてが破滅した場合、信心深い人はどうするだろうか。それもまた試練と受け止めるか、あるいは――神や仏を恨んでそれまでとは全く違う人生を選ぶのか。
迷信と社会
一方、信心深いということはしばしば「迷信深い」ということにもつながる。神や仏の存在を皆が信じていた時代ならともかく、科学が広まった現代においては深く信心することは少々貴重になっている。結果、毎日のように神に祈ったり、大事な日には捧げ物を捧げたりするような生き方は、現代的な人間達からは「迷信だ」と笑われるようなこともあろう。
また、信心深い=もともとの価値観を強く信じている人は、しばしば状況が変わっても従来のやり方や考え方に固執し、人々を混乱させることがある。一例として、現代において豊作をもたらすために人間を生贄に捧げようとする人は気が狂っていると思われても仕方がない。それは彼にとっては信心なのだが、巻き込まれる方となってはたまったものではない。
このように、信心深さも良し悪しであるのだ。


【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。