◆7回「メイド」

榎本海月の物語づくりのための黄金パターン キャラクター編+α

大きな屋敷のメイドさん、小さな屋敷のメイドさん

前回紹介した執事と並んで、メイドもなかなか実情と私たちのイメージが乖離しがちな存在である。
裕福だったり格が高かったりする家などが使用人として女性を雇って料理・洗濯・掃除などをやらせるのは、世界的にさまざまな場所で見られる風習だ。中でも特にメイドと呼ぶ場合には、イギリスを中心とするヨーロッパ文化における女性使用人のことをさすのが普通である。
大きな屋敷の中にはたくさんのメイドたちが働いていて、頂点に立つのは女主人に直接仕える家政婦である。この下(あるいは別の指揮系統)に、一般的でさまざまな仕事をするハウスメイド、食卓関係のパーラーメイド、女料理人、子守のナニー、女主人の身の回りを世話する侍女、非常に重労働な洗濯女中など、さまざまなメイドたちが付き従って日々働いていた。彼女たちは幼いうちから預けられ、働く中で簡易的ながら教育も受けていく。
やがて時代が進むと彼女たちにお仕着せの衣装を着せるようになり、現代の私たちが知るようなメイドになっていくわけだ。
一方、メイドの職場は必ずしもそのような大きな屋敷とは限らない。時代にもよるが、中流階級が一人だけメイドを雇って全ての家事を頼む、ということも数多くあった。そのようなメイドのことをジェネラルサーバントとか、メイド・オブ・オール・ワークスとか呼んだ。

現代文化のメイド

そのような歴史的に正しいメイドとはほとんど別のところに位置するようになったのが、フィクション作品に登場したり、メイド喫茶で働いていたりする「メイドさん」たちだ。フリルの多い独特のコスチュームの魅力、主人に仕えるというキャラクター性などがフックになったのか、幾度かのブームを経てメイド的なキャラクターはいまや2次元でも3次元でもすっかり定着した感がある。
しかしその一方で、現代でもメイド文化は世界各地で健在で、たとえばシンガポールなどでは他国からの出稼ぎのメイドを雇うのがごく普通であるというし、日本でも(メイドとは言わないが)家政婦を雇う文化がある。そのようなフィクショナルなメイドとリアルなメイドの違い、差別化、対立、融合などは物語のテーマとしても面白そうだ。

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【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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