第14回「紙がない時代の「書くもの」」

ファンタジーを書くために過去の暮らしを知ろう!

紙のない時代

「いま」私たちにとって、木の繊維を素材にして作る「紙」は社会に欠かせないものになっている。本や新聞の材料であることはもちろん、ティッシュペーパーやトイレットペーパーのような生活に必要な消耗品の材料としても重要なものだ。
しかし、現在私たちの使っているような紙が広く使われるようになったのはそんなに「むかし」のことではない。古代中国で発明された紙はやがてまず中国文化圏、そして中世の終わり頃になってようやくヨーロッパにも伝わっていくのだが、「いま」のように安価に使えるものではなかった。
その結果、紙と同じ目的で使われるもの、紙の代用に使われるものが数多くあった。よく使われたのは竹や木だ。竹簡とか木簡とか呼ばれる板状の形に加工されて使われるのが主だった。紙と比べれば嵩張るし重いしと取り回しが良くはないが、高度な技術が必要なく安価に生産できる点で大いに評価された。表面を削ることで再利用できるというのも重要だ。
古代のオリエントなどでは粘土板がよく用いられた。文字を刻み、日干しあるいは焼くことによって固め、保存することによって記録を残すわけだ。
一方、古代エジプトではパピルスという葦の一種を素材にしたパピルス紙が用いられていて、これがギリシャやローマにももたらされたが、やがて輸出されなくなったので新しい記録手段が世に出てきた。それが羊皮紙である。文字通り羊の皮を素材に、これをなめしてあたかも紙のように文字を書いて記録できるものとしたわけだ。先述したとおり、中世ヨーロッパには中国由来の紙が入ってこなかったので、記録には基本的にこの羊皮紙が使われた。もしあなたが中世ヨーロッパっぽさを強く出したい!と思うのであれば、羊皮紙を出すと良い。

紙がなくなる時代

一方で「いま」を考えると、かつてあれほど私たちの生活に溢れかえった「紙」がその姿を消しつつあることは見逃せない。伝達するにせよ、記録するにせよ、紙ではなくデジタルなデータを用いるのがすっかり一般化しつつあるからだ。
デジタルなデータは記録する容量も、他者に伝達するスピードも段違いで、しかも音楽や動画も記録できるというのだから無理はない。
ただ、デジタルなデータは記録の保存期間の問題や、読み取るための機械が必要だという問題がある。これに対して紙(特に墨で書いた和紙)の保存能力は群を抜いており、紙を再評価する向きもある。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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