◇10回「悪役令嬢もの」

榎本海月の物語づくりのための黄金パターン+α

悪役令嬢って?

これもいわゆる「なろう」系を中心に流行になった物語ジャンルだ。その出現経緯は非常に複雑なものだ。
まずそもそものルーツとして、少女漫画を中心に見られた「お嬢様キャラ」というキャラクターパターンがある。『エースをねらえ』のお蝶夫人あたりが有名だが、つまり「主人公の前に立ち塞がる敵やライバルで、独特のお嬢様喋りや縦ロールなどのキャラクター属性を持ち、高慢だったり誇り高かったりする性格を持っている」キャラクターだ。
もう一つのルーツは「乙女ゲー」だ。『遥かなる時の彼方へ』『アンジェリーク』などに代表される「少女(乙女)が主人公で、イケメンたちと恋愛をするゲーム」のことだ。これにおいて、主人公のライバル的なポジションにお嬢様キャラ、すなわち「悪役令嬢」がいる(ただ実際には有名どころにはあまりこのようなキャラクターはいないとさもいい、実にややこしい)。
このような事情を前提に、「乙女ゲー(っぽい)世界観の悪役令状に異世界転生した主人公の話」が、いわゆる「悪役令嬢もの」の大まかなあり方だ。ちなみに、このような「ゲームやアニメなどのキャラクターになり変わってしまう」物語パターンは「憑依もの」などとも呼ばれる。

流行りパターンだからこそ……

物語としての悪役令嬢もののポイントはどこにあるのだろうか。ここまで見てきた通り、悪役令嬢ものは非常に「前提」の多い物語パターンだ。伝統的なお嬢様キャラ、乙女ゲーム、そして「なろう」系と憑依もの。これらの前提を引きながら、お約束を踏襲していくというのが一つの定番だ。「こういう展開が楽しいんだよね」「そうそうこうなるんだよね」という読者の求めに応じていくわけである。
ただ、人気パターンなだけに、いま読者の興味を引くためにはそれだけで足りない。あえてパターンを外していく必要がある。たとえば、現在連載中の漫画には「悪役令嬢ものだが憑依したのがおじさんなので色々行動がおかしい」というものがある。期待に応えつつもいかに予想を外す要素を入れ込んでいくかが大事だ。

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【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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