◇2回「冒険小説」

榎本海月の物語づくりのための黄金パターン+α

実に多様なジャンル

冒険小説は文字通り「冒険をする」小説である。度胸や技術、知識はあるが、敵や障害と比べるとちっぽけな存在である主人公とその仲間たちが、財宝やロマンや国家への忠誠などの目的のため、果敢に挑んでいく――というのが大まかな枠組みであろうか。
逆に言えば、同じように「冒険小説」と呼ばれる作品であっても、この大枠以外は驚くほど中身が違う、ということが珍しくない。
つまり、戦争や革命やクーデターのような歴史的事件に挑む作品あり、密林や深海のような秘境に挑んでいく作品あり、軍事スリラー、政治スリラー、国際謀略小説と呼ばれるような「スパイのような立場の主人公が謀略に挑んでいく」作品あり、危険な高山に挑む山岳冒険小説あり……という具合だ。
どちらかといえば歴史の謎、謀略の謎、といったミステリ的要素が絡みがちという共通点はあるが、それだけで全体を把握するのも無理がある。

中身はバラバラ!

どうしてこのようにばらばらになるかといえば、時代の中で「冒険」にふさわしい舞台が変わっていった、ということなのだろう。かつて人類がいまのようにたやすく地球の隅々まで移動できなかった時代、冒険の余地はいくらでもあったし、立ちふさがる障害は地球であり自然であった。
しかし、やがて秘境があらかた征服済みになると、今度は国家という巨大な存在に挑むのが冒険になったのである。そして冷戦の時代も終わって国家の限界も見えてくると……というわけで、冒険の舞台は次々変わっていく。今後は「宇宙冒険小説」とも言うべき物語も増えていくのだろうし(アンディ・ウィアー『火星の人』はいかにもそれっぽかった)、冒険小説のあり方も変わっていく。
あなたは、どんな舞台で、どんな障害・強敵を相手に冒険させたら一番気持ちが盛り上がるだろうか。そう考えることに意味があるし、またそのような物語を書きたい時に先人の冒険小説は大いに参考になるはずだ。

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【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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