今回からの連載は、DBジャパンから刊行している『物語づくりのための黄金パターン117』の延長戦的な位置付けになっている。すなわち、刊行後に発見したパターンについて紹介するのが目的だ。
集めるため、回るために旅をする
タイトルの「アイテム集めもの」「チェックポイントもの」というのは本連載における造語だが、なんとなく皆さんにもイメージが付くのではないか。つまり、物語における大目的としてなんらかのアイテムを集める、あるいはチェックポイントを通過することが定められている物語パターンだ。目的はひとつであることもあるし、複数であることもあるが、ひとつの場合は物語の方向性が独特なので、ここでは複数のケースを紹介する。
集めるものはなんだろうか。世界を救うためのアイテムやともに戦う仲間のような、ポジティブな存在かもしれない。放っておいたら人々を殺し続ける犯罪者のような、ネガティブな存在かもしれない。あるいは「犯罪者が世界を救うための武器を持って逃げ出したから取り戻さないといけない」のような、両者のあわせ技も珍しくない。チェックポイントのパターンだと「聖地巡礼」がありがちだが、「犯罪捜査のために各地を回らなければいけない」などのケースもある。
数もいろいろだが、多いと読者もうんざりするし、少なくとすぐ終わってしまう。長い物語の中のイベントのひとつとして扱うならともかく、物語全体の大目的としてなら、5つから7つあたりがベタであろうか。もちろん、100とか1000とかで「どうするんだろう」と読者にワクワクさせるのもひとつの手段だ。
目的がはっきりしている!
このパターンは非常に人気がある。「これは何をする物語なのか」「主人公たちの目的は何なのか」がはっきりとしていてわかりやすいからだ。作家志望者が物語を作るとどうしてもこのあたりのことがぼやけがちなのだが、「集める」「チェックポイントを通過する」なら読者へ明確に伝わる。
ただ、別の問題もある。「アイテムがあと2つだからそろそろ終わりだな」という具合に、先が見えてしまうのだ。そこで、「残り2つのアイテムが奪われて敵がやってくる」「そもそもアイテム探しの旅には別の意味があって、そっちに挑むことになる」などの形で、展開に変化をもたせるという手段がよく使われる。ところが、このような「変化」が定番化すると、読者の方が「どうせすんなり全部集めはしないだろう」と考えるようになった。やっぱり先が読まれてしまうわけで難しい。
こうなるといっそアイテム集めやチェックポイントは中盤までと最初から割り切り、そこから何が起きるか、という話にしたほうがいいかもしれない。実際、先述した『ドラゴンボール』も、不思議な力を集める旅はシリーズ全体の前半部分ですっかり終了し、その後は物語の前提的な位置づけになっている……。


【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。