♠40回「水の事故には……」

榎本海月の物語に活かせるトラブル&対応事典

やっぱり落ち着くことから

山の事故と並んで多いし危険なのが「水の事故」だ。海遊びや川遊びは人気のレジャーだが、それだけに毎年多数の事故が起きて、その中には死亡者も少なからず含まれている。
誰かが、あるいは自分が水の中に落ちて、溺れたらどうするか。第一に行うべきは落ち着くことだ。溺れている本人が落ち着くことは難しいかもしれない(もし落ち着くことができたら浮かぼうとするだけで溺れる危機からかなりの確率で助かることができる。人間の体は自然と浮くようになっているからだ)。しかし、周囲の人間が落ち着くだけでも助けられる可能性は高まる。

なるべく陸上から助けたい

次に救助を始める必要がある。このとき、ドラマなどでは飛び込んで助けに行くことが多いが、現実にはあまりおすすめされない。プロの救助者、レスキュー隊員でもこれは避けるという。
なぜなら、パニック状態の相手に抱きつかれてしまうと、助けに行った人が少し泳げてもすぐ自分が溺れることになるからだ。そうでなくとも二重遭難の可能性があり、危険だ。
そこで、陸上から何らかの手段で救助をするのが良い、ということになる。ロープ(衣服も材料になる)を投げたり、棒を差し出したり、複数人で手をつないで引っ張り上げたり、で救助できるとよい。ちなみに、引き寄せの際にはなるべく重心を低くすることで、自分が引きずり込まれるのを防ぐことができる。
加えて、ちょっとだけ水をいれたペットボトルだったり、クーラーボックスや灯油の缶など大きな器(それも蓋を閉められるもの)を投げると、ある種浮き輪のようになって助けるのに役立つ。
どうにか助け出せたが意識がないとなれば、すぐに応急処置が必要だ。最も優先するべきは心肺蘇生で、よくドラマの中では「水を吐かせる」シーンが描かれるが、まず心肺蘇生のほうが優先であるとされる。そして、そのためには水の中だとなかなかうまく行かないので、水際へ引っ張ったり、ボートに乗せたり、という作業が必要だ。
あとはよくあるシーンとしては「水中で体が冷えているのでタオルや焚き火などで体を温める」というところだろうか。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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