第34回「高校」

榎本海月の連載

大人の世界への扉

16歳になると、多くの若者が高校に通うことになり、18歳までをここで過ごすことになる。義務教育ではないが、現代日本では高校、さらに大学まで通うのはそれなりに当たり前の習慣として定着しているようだ。もちろん、中卒で働き出すものもいる。
中学と高校では、学校のあり方はあまり変わらない。中高一貫校が多数存在するのもそのためだろう。それでも違いを見出すなら、授業がさらに高度なものになっていることーーそして何よりも、大学受験や就職を念頭においたクラス編成やカリキュラムになっているところが多い、ということはいえよう(工業高校や商業高校など、特殊な高校については別項を立てて紹介する)。
そう、高校は「大人の世界への扉」なのである。中学にもそのような性質はあったが、高校の方がよりはっきりしている。高校3年間で学ぶのは当然として「それを受けて君は卒業してからどうするのか?」が問われるのが高校なのだ。だから、人によっては高校生活よりも受験勉強に時間を割いたり、アルバイトに精を出したり、ということにもなるわけだ。
もちろん、誰もが卒業後をはっきりと見定めているわけではない。いや、むしろ卒業後をしっかり考えている生徒の方が少数派ではないか? 「高校3年間が楽しくて、先のことなど考えたくない」「あっという間に3年がたってしまった」「先のことは何も考えていないがいい大学に行って悪いことは何もないはずだ」……このような考え方は別に珍しいものではないはずである。

アンバランスな時期

高校生のあり方を考えるときには、中学の項で紹介した要素に加えて、そのような「大人になる時間、社会になる時間が近づいてきている」という要素を加えると理解しやすいのではないか。
肉体的には成熟のピークに近づき、大人と比べても遜色なく育っているものも多い。精神的にもそれまでとは比べものにならないほど成長し、中学生の時ほど不安定にもなっていないが、しかしそれだけに近視眼的な理想主義に取り憑かれたり、大人を馬鹿にしたり、ということにもなりがちだ。
そのような肉体精神の成熟と比べて、社会的にはまだまだ「子供」扱いだし、時間やお金、社会的立場も自由にはならない。親や教師から命令されて反発してしまうことも多いだろう。
大人に近づき、成熟し、しかしまだ大人ではない。高校生を描くなら、この辺りのアンバランスさはうまいこと活かしたいところではある。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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