♠23回「手当② 外傷と出血」

榎本海月の物語に活かせるトラブル&対応事典

出血は致命的

前回は街中での応急手当の概要を紹介したが、日常の中で最も遭遇する可能性が高い(そしてその場で処置することが多い)のは各種の外傷であろう。
例えば切り傷や刺し傷だ。カッターや包丁で切ってしまうこともあれば、紙や草なども鋭い部分が勢いよく当たれば切れてしまうのが人間の肌である。これを放置するとどうなるのか。
一番怖いのは出血だ。大きな傷ーーそれも血管を傷つけてしまったような傷で血が出すぎる(大出血)と、人間は簡単に死んでしまう。出血死だ。
どのくらいの出血で命に別状があるかは、その量と早さによる。一般に、成人(体重60キロ)の人間の血液は4リットル前後とされ、このうち2割が一気に流れ出るようだと出血性ショック、3割なら出血死が見えてくる。そのようなことにならないよう、なるべく早い段階で止血せねばならない。
よく、物語の中で、矢や槍などが体に刺さった時、無理に抜かない方がいい……と説明されることがあるのは、刺さっていることで擬似的な血止めになっているのが、抜くことで抑えていたものがなくなる(しかも抜く時にさらに血管を傷つける)ことで出血が増えるのを防ぐためだ。
もちろん、刺さったままでいいわけではないので、医者などが適切に抜く(そしてすぐさま止血する)必要はあるのだが。

止血法色々

具体的に止血はどうするのか。最も一般的なのは「直接圧迫止血法」といって、文字通り押さえ込んで血を止める。といっても手を使うわけではない(どうにもならなければ手で抑えることもあるだろうが)。清潔なガーゼやハンカチなどを用い、包帯で固定するのが基本だ。人間の体には自己治癒の能力があるのである程度の傷口と出血なら押さえ込んでいる間に止まるようになっている。
それでも止まらないような大きな傷口や出血なら、止血帯止血法が用いられる。傷のある場所の上あるいは下を帯やロープで縛り、傷口に血が流れ込むのを止めるのだ。ただ、これは神経へのダメージがあるなど危険なやり方なので、素人が手を出すのは怖い。
また、より乱暴で特殊な状況で行われていた止血法には傷口を焼く、というものがあった。焼けば血が止まる。もちろん火傷を作っているわけだから痛いし、後も残る。通常やる手法ではないが、こういうものも知っておくと描写に使えるだろう。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース(https://www.ndanma.ac.jp/nma/course/novel/)】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

タイトルとURLをコピーしました