第13回「保健室」

榎本海月の連載

療行為はできない

 学校に通うのが心身ともに未成熟な若者たちであり、体を動かす授業などもある以上、避けては通れないのが体調不良、病気、そして怪我だ。授業中のトラブルもあるし、学生同士の喧嘩などもある。そこで、一般に学校には保健室が設置され、そこに養護教諭が常在している。
 ただ、ここで医療行為は行えない(怪我の手当などは応急処置の範囲であったり、緊急避難的に許される、とされる)。養護教諭は医者でも看護婦でもなく、別の資格だからだ。そこで、怪我や重病ならできる範囲の手当だけして救急車に乗せて病院へ送ることになるし、常備してある薬品も市販品の風邪薬や痛み止め、湿布の類にとどまる。この点はちゃんと意識しておかないととんちんかんな描写をしてしまいがちなので注意しよう。
 保健室と養護教諭には別の仕事もある。身体検査や大規模な検診などを行う場合には、ここが重要な拠点になる。といっても、学校全体で行う場合には保健室ではとても間に合わず、体育館などを使うことになるだろう。

学生にとっての保健室

 以上のような事情は運営側の話である。学生たちにとってはどうだろう。
 ベッドがあって横になり休む、そして寝ることができる保健室は、学生にとっては天国だ。熱が出てゆっくりできたら幸せだし、人によっては仮病をしてでも保健室で休みたい、と考えるかもしれない。サボり場所としての保健室はまさに青春の一幕と言えよう。
 どのくらい保健室サボりが横行しているかは養護教諭次第だろう。厳しく取り締まっているケースもあれば、方針や能力の関係で非常にゆるくなっているケースもあるだろう。あるいは養護教諭に何かしら思惑があり、保健室に人が集まっている、などということも考えられる。
 保健室は問題を抱えた学生にとって最後の逃げ場、あるいは反転抗戦の拠点になる可能性がある。トラブルを抱えた学生が養護教諭にだけ打ち明けたり、体に問題があってたびたび保健室で手当を受けたり、あるいは保健室登校をしながらどうにか教室への復帰や卒業を目指したりするわけだ。養護教諭は親身に相談に乗ってくれるかもしれないし、冷たく追い返すかもしれないし、表面上の優しさとは裏腹に何かを隠しているかもしれない……。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース(https://www.ndanma.ac.jp/nma/course/novel/)】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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