小説家が収入を得る手段は

榎本秋のクリエイト忘備録

小説家が収入を得る手段は

・発売された書籍、電子書籍の収入
・雑誌やWEBサイトの原稿料

になります。
今は文庫書き下ろし全盛時代なので、雑誌の原稿料が入る人はあまり多くないと思います。
この発売された書籍・電子書籍から収入を得るために、出版社さんと結ぶのが出版契約書だとざっくり思ってください。

この出版契約書では色々なことを決めるのですが、全てに目を通すようにしてください。後になってから後悔しても遅いからです。
わからない文言や気になる部分は担当さんにどんどん質問してください。

ちなみに、紙の書籍かつ小説の場合は、本体価格の5~10%+消費税×刷った部数分が払われる(発行印税)ことが多いですが、重版からは売れた分だけ支払い(売上印税)という出版社も増えてきました。

小説以外だと、はじめからある程度の保証部数以外は実売という出版社さんや、作った部数×税込価格の総額の30%を控除した額を先に支払い、残りは売れた分(30%は一例です)という出版社さんもあります。というか、多いですね。

電子書籍は、はじめのころは紙と同じでかつ紙より比率もよかったのですが、最近は出版社さんに入金される金額の10~20%という契約が増えました。
これは電子書籍の形態が多様になり、割引セールや読み放題などが増えてきた影響だと思います。

ここからは私が今まで作家・作家事務所経営者として契約を結んできて気になったことをまとめてみます。

消費税は外税になっているか。
 実は、消費税を払わない契約書がありました。
 本来消費税は外税で別途払わないといけません。といいますのも、作家さんに払うお金は
 本体価格の〇%×部数という計算をするのが本来で す。書店でも本体価格に消費税を足しますよね。
 なのに、作家には消費税を払わないという契約になっていたことがありました。

二次利用の権利がすべて出版社に
 アニメやゲーム、マンガ、翻訳になるなどの二次利用の権利は、出版社さんを優先とすることが
 多いのですが、優先ではなく出版社さんが権利を持つというケースもありました。
 創作に専念したいのなら出版社さんが動いてくれるのととても助かるのですが、契約によっては
 作者側に選択権がないことも。そこだけ留意し、意に沿わない場合は拒否できるようにしたほうがいいと思います。

作品の世界観、登場人物などを他社では利用できない
 これは当時びっくりしました。さすがにすぐ気がついて外してもらいました。
 最新作に過去作のキャラクターが出てくるといった作品は珍しくないと思います。それができないのです。
 創作の大きな妨げになると思いますので、意図を確認した上で外してもらうようにしましょう。

出版契約の有効期限
 最近は紙の本が絶版し流通しなくなっても電子書籍はずっと流通できるので、この有効期限というのが
 難しくなっているように感じます。
 初回3年間、その後自動継続(3ヶ月前に申し入れれば解除できる)で1年という条件が最近は多いように
 感じますが、初回10年、自動継続3年という契約もたまにみます。
 出版業界は現在激変の時代であり、あまり先は見通せないと感じます。私としては初回が3~5年。
 その後の自動契約は1年をおすすめしています。

以上はプロ作家になってから気を付けるべき点でしたが、作家志望時代は無関係、なんてことはありません。
新人賞に応募する時は応募条件を確認してください。
大抵の出版社の賞では、出版権と二次利用件がその出版社に帰属、もしくは優先となり、その対価を支払うという条件になっていると思います。

一部の新人賞では賞金がその対価に充当されています。つまり、仮にアニメ化した際、その利用料は賞金分が消化されるまでは支払われることがないということです。
同じく一部の新人賞では、「デビューから数作、もしくは数年はその出版社で仕事をすること」という条件がつけられる場合もありますので、そこもご確認ください。

ということで、今回はお金と契約の話をさせていただきました。

・新人賞に応募する際は応募規約をみる
・出版契約書を結ぶ際は、条項をしっかり確認し、疑問点があれば相談すること

を今回は覚えていただければ嬉しく思います。

榎本秋

榎本 秋(えのもと あき)
活字中毒の歴史好き。歴史小説とファンタジーとSFとライトノベルにどっぷりつかった青春時代を過ごし、書店員、出版社編集者を経て2007年に榎本事務所を設立。ライトノベル、時代小説、キャラ文芸のレーベル創刊に複数関わるとともに、エンタメジャンル全体や児童文学も含めて多数の新人賞の下読みや賞の運営に関わる。それらの経験をもとに、小説、ライトノベル、物語発想についてのノウハウ本を多数出版する。

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