第0回「なぜ学園(学校)なのか?」

榎本海月の連載

学校? 学園?

この連載の目的は、「学校」「学園」にまつわる創作に役立ちそうな要素、場所、情報を紹介することです。
ちなみに。学校と学園という2つの言葉(さらに「学院」という言葉もありますね)は混同しやすいものですが、一般に中高など各種一貫校、あるいは複数の学校をまとめたグループが「学園」と名乗ることが多いとされています。
また、エンタメの世界ではジャンルとして「学校もの」と呼ぶよりも「学園もの」と呼ぶほうが多く、登場する学校も「●●学園」という名前で出てくることが多いようです。これは、「学校」は耳慣れた言葉であるのに対し、「学園」のほうが聞き慣れず、特別な存在、憧れるイメージが付いてくることが関係しているのだと考えられます。

学校と若者向けエンタメの深い関係

どうしてこのような連載を立ち上げたのかといえば、ライトノベルのみならず現代におけるエンターテインメントでは、学校は非常に数多く登場するからです。現代日本を舞台にした青春ものはもちろんのこと、ファンタジーでさえしばしば「学校」が登場します。魔法使いを養成する魔法学校や、騎士を育成する学校(のちの時代における士官学校のイメージが重ねられていることが多いようです)、あるいはその世界独自の職業や立場に関係する学校がさまざまな物語に登場します。
どうしてそうなるのでしょうか。
若者向けエンターテインメントでは、主人公を始めとする主要キャラクターは若者であるほうが都合が良くなります。感情移入(共感)がしやすいし、読者が応援するときにも気分が乗りやすくなるからです。
彼ら若者についての物語を描こうとすると、学校からはなかなか逃れられません。なにしろ、現代日本の若者は当たり前に学校へ行きます。そこで事件を起こすにせよ、あるいは学校の外で事件を起こすにせよ、現代日本の若者を物語の中で扱う以上は学校と全く無関係にはいられないのです。
たとえば不思議な夢を見た主人公たちが学校で「昨日なにかなかったか」と話し合ったり、大事件に巻き込まれて命からがら逃げ出した主人公が学校の平凡な日常を噛み締めつつ、次なる事件の予感に怯えたりするわけですね。これらのシーンはヤマタニにおける貴重で重要な「タニ」になるわけです。
ファンタジー世界の若者たちも(モデルにする中世ヨーロッパの若者は基本的に学校には行きませんが)学校に行かせることで読者にとっての彼らの生活や気持ちを想像しやすくすることができます。
というわけで、ここからしばらく、もう一つの連載と交互という形にはなりますが、学校にまつわるさまざまな物事のお話にお付き合いいただきますので、よろしくお願いします。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース(https://www.ndanma.ac.jp/nma/course/novel/)】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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