Q.いい世界設定ってつまりどういうものですか?

榎本海月のライトノベル創作Q&A

A:「土台」になるもの

いいキャラクター、いいストーリーはわかりやすいですよね。読者が好きになってくれるキャラクター、読者を夢中にさせるストーリーが「いい」ものです。
では、世界設定はどうでしょうか? 情報量が多ければいいのか、リアルならいいのか。残念ながらそういうものではありません。
いい世界設定とはなにか。榎本メソッドでは「キャラクターやストーリーの魅力を支える土台として適切に機能するもの」をいい世界設定と考えます。
どういうことでしょうか。もうちょっと具体的に掘り下げてみましょう。
たとえば、超一流の戦士として活躍しているキャラクターが登場するとしましょう。彼の強さはどんなところから来ているのか、どうして有名なのか、そもそも戦士が必要とされるような社会(世界)とはどういうものなのか。そんなところが世界設定の段階でフォローされていると、キャラクターの存在に説得力が生まれます。
あるいは、主人公がふとした時に口にするのがその世界の神様の名前であったり、印刷技術がすでに普及している世界だから情報の伝達が早かったり、火薬のある世界で魔法使いがそれを利用した新しい戦闘法を発明していたり……それらの要素が物語の中で効果的に使われると、設定に魅力を感じる人は多いのではないでしょうか。
この時、設定が先に来るとあまり好まれません。冒頭から神話や王国やら色々語りたい人は多いようですが、おすすめできません。あくまで先にストーリーがあり、それを支える、つまり土台になってこそ、設定の価値が高まるのです。

A:引っかかりのなさも大事

もう一つのポイントは「矛盾がない」ことです。いや、矛盾がまったくない架空の世界なんてそうそう作れたものではないでしょうから、矛盾が目立たない、「読んでいて引っかかりを感じない」としておきましょう。
設定の矛盾、というのはわかりやすいですよね。ファンタジー世界に特別の理由なくロボットが出てきたら困ります。中世ヨーロッパ風ファンタジー世界で丼飯が出てくるのも「どうなってるんだ」となるでしょう。
そういうのは単純ですが、「Aという設定があるならBという状況になるのはおかしいんじゃないか」みたいな矛盾も結構あって、これは書く人、読む人の知識にかなり左右されるのが困りもの。
これらの矛盾はなるべく減らされるならそれに越したことはありません。矛盾は読者の引っかかりになり、引っ掛かりは違和感となって作品への没入感を削いでしまうからです。
ただ一方で「よほどの矛盾以外は気にしないほうがいい」という考え方もあります。設定はあくまで土台ですから、そこにちょっと引っかかっても物語さえ面白ければ結局気にならないものだからです。むしろ、細かい矛盾にこだわってお話が面白くなくなることを恐れたほうがいいかもしれません。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。』などがある。2019年にも新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』(秀和システム)を刊行。PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。講師としては愛知県名古屋市の専門学校日本マンガ芸術学園にて講義を行い、さらにオープン参加形式で【土曜セミナー】毎月開催中。

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