Q.現代ものなんで世界設定いらないですよね?

榎本海月のライトノベル創作Q&A

A:ファンタジックな要素はしっかり作りましょう

これは世界設定という言葉が生み出す誤解です。なるほど、現代日本を舞台にするなら、ファンタジーやSF的な意味での世界設定はいらないかもしれません。国家、社会、文化、地理などは「現実と同じ」とすれば基本的には済むからです。
でも、本当に全てが「現実と同じ」でしょうか? たとえば、もしあなたが作ろうとしている物語が「現代ファンタジー」であるなら、用意するべき設定ーーすなわち「現実との違い」があるはずです。たとえば魔法や超能力。怪物や妖怪。世間には秘密になっている事件や組織。そのような要素が物語の中で関わってくるなら、しっかり設定をしておきましょう。その上で、「怪物たちがいるせいで現実の日本よりも明らかに治安が悪い」や「魔法使いたちは基本的に旧家なので財産持ち。一部の新興魔法使いは財産が無いので非常に苦しんでいる」などの設定があると、物語に深みが出ます。そう、何かしら(表に出てくる機会がないにしても)変化が起きれば、別のところにも変化があってしかるべきなのです。それは立派な世界設定と言えます。

A:舞台設定だと考えてみたらいかがでしょう

もう一つ。ファンタジックだったりSF的だったりする要素がなかったとしても、現代物の世界設定はありえます。この場合は「舞台設定」と言った方がしっくり来るかもしれません。
あなたの物語の舞台になる地域や、集団、建物にはどんな事情があるのか? どんな雰囲気があるのか? どんな人が集まっているのか? どんな過去を持っているのか? それらを考えることで、物語に大きな影響を与えることができます。
たとえば、学校が舞台の話なら、立地、特別な設備、校風、変わった委員会や部活の存在、過去にあった事件などが設定の余地になりえます。これにはもちろん色々なパターンがあって、「都市部の学校ならだいたいこんな感じ」「地方の学校ならこう」「お嬢様学校ならこうで、名門男子校はこう、不良校ならこう」などと定番の要素があります。それをしっかり押さえておけば雰囲気が出るし、自分の書きたい要素以外に頭を悩ませる必要がなくなります。
これらについて考えることは、ファンタジーものの場合で王国や都市、歴史、文化について考えることと同じなのです。現実とよく似た(同じ)世界だからこそ、小さな独自事情にこだわる意味があります。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。』などがある。2019年にも新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』(秀和システム)を刊行。PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。講師としては愛知県名古屋市の専門学校日本マンガ芸術学園にて講義を行い、さらにオープン参加形式で【土曜セミナー】毎月開催中。

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