Q.キャラクターの成長って必要ですか?

榎本海月のライトノベル創作Q&A

A:もちろん! 是非取り入れたいところです

はい、榎本メソッドでは、「キャラクターの成長」を重視します。
基本的には「必要なものである」と考えてもらったほうが良いでしょう。成長を中心に据えた物語は「教養小説(ビルドゥングスロマン)」といって昔から非常に人気があるジャンルで、利用しない手はない、と考えます。

ただ、成長という言葉には色々な意味があります。単純に未熟で能力の低いキャラクターとして登場した主人公が、物語の中で新たなスキルや能力を獲得するケースが最もわかりやすいですが、しかし成長とはそれだけではありません。
それまでに気づいていなかったことに気づいたり、自分がうすうすわかってはいたけれど認められなかったことを認めたり……という精神的な成長も、立派な成長です。

そして、これらの成長によって、物語の序盤ではできなかったことの実現、乗り越えられなかった障害の超越、倒せなかった強敵の打倒を、クライマックスにおいて成し遂げる――というのはシンプルにカタルシスがあり、気持ちの良い展開です。

あなたが魅力的な、読者を強く惹きつける物語を描こうと思えば、これを使わないのはあまりにももったいないのです。

A:はい。しかし、必ずしも……?

ただ、このような話し方をしますと、「じゃあ主人公を必ず未熟で弱いキャラクターにしなければならないのか、それはつまらない」と考える人が多いようです。
でも、そんなことはありません。

実際、人気作品には、最初から強いキャラクターが大活躍する(いわゆる「俺TUEEE」もの)作品がたくさんありますよね。でも、それらの作品も成長を蔑ろにしているわけでは必ずしもないのです。
これはどういうことでしょうか。やり方がちゃんとあるんです。

一つは、「もとから強いキャラクターがもっと成長する」方向にすることです。世界有数クラスの腕利きである主人公が、世界最強の男に挑むようなインフレ方向だったり、能力やスキルとは別の(例えば先程触れたような精神的な面で)方向で成長したり。

もう一つは、「強いキャラクターとは別のところで成長を表現する」ことです。完成された推理力や精神性を持つ探偵の横に未熟な助手を配置したり、世界最強の傭兵とともに旅をする若い依頼人が彼の背中を見ながら成長したり……といえばわかりやすいでしょうか。
そう、物語上の機能を一人のキャラクターにつぎ込む必要はないのです。柔軟な考え方を持ちましょう。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。』などがある。2019年にも新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』(秀和システム)を刊行。PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。講師としては愛知県名古屋市の専門学校日本マンガ芸術学園にて講義を行い、さらにオープン参加形式で【土曜セミナー】毎月開催中。

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