模写について

榎本秋のクリエイト忘備録

小説を書き始めて文体がしっくりこない。そもそも自分の中でどういう文章を書けばよいかわかってないという方によくおすすめしているのが芥川龍之介の短編『トロッコ』の模写です。

Q. 模写するとどういう効果(というと変ですが)があるんですか?

『トロッコ』は情景描写も状況描写も素晴らしい作品。主人公の心情の変化も加味しながら丁寧に読み、その後に模写するとよいです。
模写したあとは、主語(S)動詞(V)、接続詞などを赤字でチェックして文章構造も考えていきましょう(接続詞には○をつけましょう。)
小説において大事なのは、必要な情報を適切な分量で記すことです。
私も時代小説を書いています。ある時、尊敬している先生が私が5行ぐらいで説明したことを2行で書かれていて。文章は奥が深いなと改めて思ったことがあります。
まずは『トロッコ』の構造を丁寧に分析し、次に好きな作家さんの長編を一つ模写するか、コピーをとって主語や動詞、接続詞などを分析してみると良いと思います。

また、その際に、

・会話文には、実際に書いてある以外のどんな意味をもたせているのか
・地の文の分量、説明は適切か


なども考えながら読んでいくと、自分がどのように文章を書いていけばいいかわかるかもしれません。

色々な本を模写して分析し、自分なりの文体を探してみてください。
大事なのは真似をすることではなく、自分としての

・会話文にいれる意味
・地の文の長さ
・テンポ


を掴むことです。

最後に『トロッコ』以外に模写をおすすめしたい作品をいくつか紹介します。
文豪作品ですと中島敦『名人伝』『山月記』
ライトノベルは『ロードス島戦記』『十二国記』などのシリーズ1巻目
エンタメだと『ぼくらの七日間戦争』なども良いです。

また、模写ではなく音読をするのも有用です。音読をした際に詰まらない文章は読みやすくわかりやすい文章だからです。自分で書いた文章を見直す際にはぜひ音読してみてください。

榎本秋

榎本 秋(えのもと あき)
活字中毒の歴史好き。歴史小説とファンタジーとSFとライトノベルにどっぷりつかった青春時代を過ごし、書店員、出版社編集者を経て2007年に榎本事務所を設立。ライトノベル、時代小説、キャラ文芸のレーベル創刊に複数関わるとともに、エンタメジャンル全体や児童文学も含めて多数の新人賞の下読みや賞の運営に関わる。それらの経験をもとに、小説、ライトノベル、物語発想についてのノウハウ本を多数出版する。

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