創作基礎11:ファンタジーを作りたい人に

創作基礎

異世界ファンタジー「ならでは」

いま、異世界ファンタジーを書きたい人がグッと増えているようです。
ゲームなどで慣れ親しんでいること、それから「自由に設定できるから細々とした整合性などにとらわれなくていいこと」などがその理由でしょうか。

そういう理由で異世界ファンタジーを書くことそのものは、別に悪いことでもなんでもありません。
書いていて楽で、楽しいのはいいことですから。
でも、それだけではあまりにももったいないのも事実です。

せっかく異世界ファンタジーを書くなら、「ならでは」の話、「ならでは」の世界を書きたいと思いませんか?
これらが描ければ、それだけでもうワクワクすることは間違いなし。
物語を読む動機は人それぞれですが、現実を忘れてひとときイメージの世界を旅行したい人は多いはず。
異世界「ならでは」の物語、異世界らしい物語を用意することができれば、そうしたニーズにバッチリハマることでしょう。
今回は、そのための話をします。

異世界ファンタジーならでは、ってどんな要素でしょうか。
一つは、現実から解き放たれて好きなように世界を作れる、ということです。
魔法があっても、怪物がいても、自由です。
それどころか、世界が平面でも、箱の形をしていても、みんな空を飛んでいても、自由なんです。
どうせなら思いっきり不可思議な光景を描いてみませんか? 想像の翼を広げてみませんか?

現実とつながっていくアプローチ

一方、現実を生きる人間が書き、読むことからもわかるように、どれだけ空想を楽しもうとしても現実からは離れられないのも宿命です。
であるなら、現実的視点からのアプローチも必要です。
その世界の人々はどんな風に暮らしているんでしょうか。何を食べ、何を着、どこに住んでいるのでしょう。
朝起きて、昼仕事して、夜寝る様子を想像できますか?
街を歩くのはどんな人たち? 旅をしているのは? 国を治めているのは?

別のアプローチも可能です。
異世界は書き手が自由に作っていい世界です。それは、自分の書きたいテーマに相応しいように作っていい、ということでもあります。
人々が平和に暮らす世界。苦難の中で生きる世界。全て、あなたの思うがままです。
現実における社会問題をファンタジー世界に投影するのも定番の手法です。
人種問題や差別問題など、現実を舞台にすると生臭くなりすぎるシビアでデリケートな問題も、
ファンタジー世界に投影するとドラマチックに、描きやすくなります。

もちろん、ここで紹介できたファンタジーのポイントはごく一部にすぎません。
でも、ちょっと興味湧いてきませんか? 是非、めくるめくファンタジーの世界に飛び込んでみてください。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。』などがある。2019年にも新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『異中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』(秀和システム)を刊行。PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。講師としては愛知県名古屋市の専門学校日本マンガ芸術学園にて講義を行い、さらにオープン参加形式で【土曜セミナー】毎月開催中。

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