2018年7月:「ありえない○○」

2018年度

特別な物語のために

ありふれたお話を作っても仕方がない、と講師は言います。
しかし「特別な話を作る、と言ってもどう作ればいいのか分からない」という人も多いはず。
そこで講師が今回用意したお話の作り方「ありえない○○」の出番です。

講師曰く「ありえない」にはふたつのパターンがあるそうです。

ひとつが「現実にはありえない」
剣を手に魔物と戦う、おかしな委員会や部活動に巻き込まれる、なんてことはそうあるものではないですよね。

もうひとつが「物語の定番・王道ならありえない」
皆さん、ファンタジーなら、学園ものなら、SFなら……という大体のイメージがあるはずです。テンプレ的なイメージです。
このイメージに沿ったお話というのは読者が受け入れやすいものですが、それは一方でありきたりになってしまうそうです。
なので、このパターンをある程度抑えながら、そこからずれたものを作っていくのが良いとのこと。

ではどうやったら「斬新だ」「新鮮だ」「ありえない」と読者に思ってもらえるのでしょう?
その答えの一つとして講師がお話したことが「方向性を変えること」と「やりすぎること」でした。
例えば「勇者といえば善人で、異世界で活躍して、悪党を倒すというイメージがあるから、じゃあ逆に悪人にしたり、現代に飛ばされてしまうことにしたり、悪人の味方ををさせたりしよう」とキャラクターを王道からずらしてみたり、
「勇者が強いのはよくあることだけど、もっと強くしたらどうだろう。触っただけでなんでも壊れてしまうとか、目で見るだけで敵が倒れるとか」と設定や展開を過剰にしてあげたりすることで「ありえない!」と思ってもらうわけですね。

「ありえない」学校とは?

そんな「ありえない○○」を、今回も参加者の皆さんに考えてもらいました。
そのアイデアのうちいくつかを、ここで紹介させていただきましょう。

テーマ「ありえない学校」より。

○Aさん
Aさんが考えたのは「テストで正しい答えを書くと点数がもらえず、おかしな答えを書くと得点できる学校」です。

たしかにありえない、と思える面白い設定です。
しかし講師はここからどう話を広げるかが大事だと言います。

このままでは、主人公が100点を取るのは難しくありません。
これが、主人公が生真面目でふざけようとしてもふざけられない、おかしな回答ができない、ということなら100点を取るのが難しくなります。
こういう工夫が必要なのだそうです。

○Bさん
Bさんは「発明の学校」を考えてくれました。
ただし発明家を育てる学校ではありません。人の役に立たないような発明品を提出すると授業料の代わりになる、というちょっと不思議なルールがある学校なのです。
実は校長先生が宇宙人で、人間の役に立たない発明を求めているため、こんなルールが生まれた、という設定です。

これもAさんの場合と同じで、お話を作るための工夫が必要だそうです。
Bさんの場合は、講師は「なぜ校長先生が役に立たない発明を求めているのか、を掘り下げることでお話を広げていく」というアドバイスをされました。

○Cさん
Cさんのアイデアは「サバイバーを育成する学校」です。
過酷な環境を生き延びる術を学べる学校、ということですね。

講師が「良い」と言ったのは、とんでもない状況をセッティングできることでした。
無人島からものがたりをはじめられたり、いきなりパラシュートをつけられ海の上から突き落とされたり、ということができるのは、確かに楽しそうです。

どのアイデアにしても、ありえない設定、面白そうなシチュエーションからどう物語を展開していくのかが大事なのだと、考えさせられる演習でした。

土曜セミナーは一般の方、卒業生の方、他コースの学生さん方のためにもなるように開かれていますので、興味のある方はぜひご参加ください。

※本レポートは、専門学校日本マンガ芸術学院における「土曜セミナー」の様子です。講義・演習は榎本秋のプロデュースのもと、講師:榎本海月が行ないました。

【執筆者紹介】榎本事務所(えのもとじむしょ)
作家事務所。大阪アミューズメントメディア専門学校、東放学園映画専門学校、愛知県の専門学校日本マンガ芸術学院、専門学校日本デザイナー芸術学院仙台校などの専門学校やカルチャースクールなどへの講師派遣、ハウトゥー本の制作を行い、小説の書き方やイラスト・マンガの描き方といった創作指導に力を入れている。

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