○○なしでは生きられない!?
依存、とはどういうことか。なんらかの外部的要素に支えられており、それがなければ生きていけないような状況のことだ。と言っても人間、何かしらに依存して生きているものだ。家族に支えられているから、仕事で稼げているから、趣味や友人関係に支えられているから、生きていける。当たり前のことである。
ただ、健康的な関係であれば「今の仕事がダメになったので転職する」「新しい趣味を増やす」など、交換できるケースが多い(家族はまた別かもしれないが)。「今のこれでなければダメ」「変えるなど考えられない」となると、ちょっと病的な匂いがしてくる。
人はどんなものに病的なほど依存してしまうのか。定番は薬物やギャンブルであろう。親離れできない子や子離れできない親が相手を強烈に束縛してしまうのも、病的な依存のあり方と言っていいだろう。
あるいは、いわゆる「社畜」にもそんなところがあるかもしれない。会社がなければ自分はいない、会社に見捨てられたら終わりだ、と依存しているから、サービス残業のような自分を傷つけるようなことをしてしまうのではないか。
脱却の困難さ
依存はいい状況ではない。となるとその依存からいかに脱却するか、というのは物語として面白い展開になり得る。ただ、これは簡単ではない。
是非一度、依存から抜け出ようとする人の体験記(近年は読みやすいエッセイコミックも随分出ている)を読んでみてほしい。長く続いた依存がいかに人を傷つけ、弱らせ、そこから抜け出すのがどれだけ難しいか赤裸々に描かれている。サブエピソードとして描くならともかく、メインテーマとして挑むなら、依存からの脱却の難しさをしっかり踏まえた上で書くべきだろう。


【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。