キャラクターが好かれれば作品も読まれる
「読者がキャラクターを好きになるかどうか」はとても大事だ。ぶっちゃけ、嫌いなキャラクターが活躍したりピンチになったりする様子を、何百ページも読んでくれるような読者はいないのである。
ただここで言う「好き」の意味合いは幅広くて、恋愛的な意味での「好き」もあれば、「応援したい」「成功してほしい」の意味での好きもある。ともあれ、そのような広い意味での「好き」の感情を読者に持ってもらうためには、どんな要素が必要なのか。
私は日々の授業や書籍では良いキャラクターには「憧れ」「共感」が大事だと言う話をしてきた。これらももちろん大事なのだが、「キャラクターを好きになってもらう(嫌われない)」と言う一点に絞るのであれば、別の要素を提示したい。それは「頑張ってる」「責任を取ってる」キャラクターであることだ。
「頑張ってる」「責任を取ってる」
意外かもしれないが、能力や成果とはまた別に、私たちは「頑張っているかどうか(ここには代償を払っているか否かも含まれる)」「責任を取っているかどうか(責任感があるかどうか)」で他者を評価しているところがある。
どんなにすごい成果を出しても、鼻歌まじりにやっている人よりは、汗水垂らして努力していたり、成果のために何かの犠牲を払っている人の方を好きになる傾向が多い。
また、失敗した時に責任をとったり、誰かのために(まるで自分のことであるかのように)頑張る人の方に好感を持ちやすいのである。
もちろん何事も「やりすぎ」はある。この世の全てに責任感を感じて(戦争が起きているのも俺のせいだ!)いつも苦しんでいるようなキャラクターは、それはもうギャグだ。ただ、誰かのために頑張れるキャラクター、ピンチの時に責任感を発揮して逃げるより先に立ち向かえるキャラクターの方が好まれやすい、と言うのは覚えておいてほしい。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。