Q.説明がどうも伝わっていない気がする……

榎本海月のライトノベル創作Q&A

A1:適切な説明の大事さ

小説とは何か。いろいろな定義があるが、その一つは「作者の頭の中にしかないイメージを、文字という情報媒体で圧縮し、読者に共用してもらう」であろう。巨大な天空都市も、奇怪な怪物も、コンピューターネットワークの世界も、文字で表現することができればまるで現実のようにイメージしてもらうことができる。逆に言えば、適切な説明ができなければ、小説というエンターテインメントは成立しない。
そのため、この説明がうまくいかず苦しむ人は多い。自分のイメージがうまく説明できない、読者に共有してもらえない、というわけだ。
まず考えるべきは、具体的な描写・適切な言葉の選択ができているかどうかだ。あなたのイメージする風景や人物、状況などを説明するにあたって、その説明や描写は適切だろうか? 間違った言葉を選んでいないだろうか? この問題を解決するには、日頃から観察や情報収集をし、また類語辞典などを活用して語彙を増やすとともに「間違った言葉の覚え方をしていないか」を確認する必要がある。

A2:こそあど言葉、代名詞

もう一つ、意外にやってしまいがちな失敗がある。それが「こそあど言葉や代名詞の使いすぎ」だ。
「これ、それ、あれ、どれ」などのこそあど言葉や、「彼、彼女」などの代名詞は普段の会話では非常に便利なので、ついつい使ってしまうことも多いだろう。実際、交互で行う会話ならその時の話の流れや、仕草・表情など言葉以外のメッセージで伝わることも多いので、使いすぎても問題にならないことが多い。
しかし、小説では話が変わってくる。文字だけでイメージを伝えようとするとき、こそあど言葉を使いすぎると具体的に何が言いたいのか、何を指しているのか、あなたが思っているよりも「具体的に何の話をしているのか」がわからなくなりがち。こういう時は「このくらいはわかるんじゃないか」くらいのタイミングで説明した方が良い。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

↑こちらから同じカテゴリーの記事一覧をご覧いただけます
タイトルとURLをコピーしました