♠50回「走り続ける限界」

榎本海月の物語に活かせるトラブル&対応事典

どれだけ走れるか?

長期間走り続けることができるのは、人間が持っている優れた能力のうち一つだ。
スピードや高く跳ぶ能力と違って数字で現すのはちょっと難しいが、例えば毎年の名物になっている日本テレビ系の24時間TVにおける24時間マラソンでは、100kmの距離を走る様が放映されている。もちろん、そのようなことができるのは事前のトレーニングおよび手厚いバックアップがあってのことだが。

長距離走は人間の得意技

これだけだと人間の持久走能力がどれだけ高いかはちょっとわからないので、他の動物と比べてみよう。【ファンタジー世界で怪物や動物と戦う選手や狩人の描写、生き様の設定に生かすことができるだろう。】
犬は瞬発力が高い生き物だ。人間と同じくらいの体重を持つ大型犬を相手にするとき、短距離勝負で彼らに勝つのは容易ではない。ところが、大型犬のスピード(秒速7〜8m)は10〜15分しか維持できない。そのため、4〜5km程度の距離での勝負では、人間が犬に勝つ。
長距離を走る動物といえば馬がいる。10kmまでの勝負では、馬が人間に勝つ。しかし、長距離・長期間走るとなると話が変わってしまう。スピードが下がるだけでなく、彼らは1日20km程度以上を走ろうとすると、身体にダメージを受けてしまうというのである。マラソン選手にはなれないわけだ。この問題があるので、広大な範囲を支配していた国家はしばしば街道上に拠点を設置し、そこで馬が取り替えられるようにしていた。急ぎの伝令は自分の馬に限界が来ると拠点で馬を乗り換え、さらに先へ進んだわけだ。
哺乳類だと人間と同じレベルの長距離走ができるものはいる(オオカミやイヌなど)――しかし、暑くなると話は別だ。走ることで発生する熱の問題と、呼吸の問題から、人間が勝つ。
どうしてこのようになるのか。二足歩行の効率の良さ、頭部の位置からのバランスの良さ、発汗性能の良さ(汗がかける上、毛皮もないから効率がいい)などが理由としてあるようだ。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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