♠49回「速く走る限界」

榎本海月の物語に活かせるトラブル&対応事典

短距離走の限界は?

誰か(何か)を追うとき、あるいは逆に追われるとき、最も手っ取り早い手法は「走って逃げる」ことだ。では、この点において人間の限界はどのあたりにあるのだろうか。【これを知っておくと、現実離れした描写をしないで済む(超人設定をするのに役立つ)のは前回と同じだ。】
しかし、一口に「速く走る」と言っても、条件次第でいろいろ代わってくるはずだ。陸上競技としての「速く走る」で最も注目されるのは100m走であろう。世界記録はウサイン・ボルトの9.58。なお、200mの世界記録も同じくボルトの19.19なので、100mと200mでは(鍛えられた)人間の速度はさほど変わらないことになる。……運動不足の人間であればスタミナが切れてガクッと記録が落ちるということもあるだろう。
このボルトの記録は人間の限界に限りなく近づいたものとされ、ある研究によると人間の限界スピードは9.35であるという。ただし、この研究はしばしば更新されていて、ボルトの記録以前には9.43あるいは44と見られていたので、今後更なる更新がされることもあるかも知れない。

マラソンの限界

一方、長距離走の代表といえば42.195kmを走るマラソン(フルマラソン)であろう。こちらの記録は2時間1分39秒で、ケニアのエリウド・キプチョゲが2018年に記録した。100m走では長らく10秒の壁を破るべく苦闘が繰り広げられたが、マラソンにおける2時間の壁はなかなか破れない(非公認記録ではキプチョゲが2時間を切っている)。しかし近年も記録の短縮は続いているので、遠からず破れる、人間の限界は1時間57分58秒だ、などとも言われている。
長距離走では走る技術や筋肉の質ももちろんだが、体内で酸素を運ぶ能力や酸素を維持する能力が重要であるとされる。そのため、生まれた時から酸素が薄い高地で暮らすケニア人らが優れているという。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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