44時限目「クトゥルフ神話の根幹は愛の欠如!?」

榎本海月の連載
その44:クトゥルフ神話の恐怖とは?

クトゥルフ神話とは?

この10年くらいブームになっているのが「クトゥルフ神話」です。20世紀初頭アメリカの作家であるハワード・P・ラヴクラフトの作品群を元にしており、大まかに言えば「この世界には人間の理解を超えた神がいて、彼らと接すると人間は狂ってしまう」お話といったところでしょうか。ラブクラフトは仲間たちとこの設定を共有し、世界を広げていきました、この手法をシェアードワールドと言います。

見捨てられる恐ろしさ

クトゥルフ神話は他のホラー作品とどう違うのでしょうか。いろいろな分析がされていますが、その中でしばしば語られるものの1つが、「クトゥルフ神話は西洋人のための恐怖」であるというものです。どうしてこんな風に言われるのでしょうか。
西洋人の基本的な考え方に、「神が自分たちを愛し、導いてくれる」というものがあります。これは日本人が仏に感じるものに近いように思います。神様にはあんまりそう言うイメージがないですよね。いいことも悪いこともするのが古来日本人的な「神」感です。
その神が人類を憎むどころか「興味がない」というのは、西洋人の価値観を破壊する恐ろしさがあります。だから怖いのです。
では、日本人にはクトゥルフ神話的な恐怖は理解できないのでしょうか? いいえ、そうではありません。日本人の場合、神に見捨てられるよりは「社会から孤立する」ことで同じような恐怖になるのではないでしょうか。このような視点を持ってみるのも面白いでしょう。


【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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