28時限目「おすすめ本③ 呉座勇一『陰謀の日本中世史』」

榎本海月の連載
その28:おすすめ本③ 「陰謀の日本中世史」

陰謀を斬る本

歴史の話をしてしまったので、せっかくだからおすすめ本も歴史で……ということで、この回で紹介したのは呉座勇一『陰謀の日本中世史』です。この本はざっくり言えば「日本中世史におけるさまざまな陰謀論を紹介した上でどうおかしいのか紹介する」ものです。
その紹介は小気味いいとさえ言えるもので、歴史の動きは陰謀によって少数の人間が操ったのではないか? という考え方を、「史料に基づくとそういうふうには考えられません」「それはあまりにも非合理的です」という感じでズバズバ否定していきます。

陰謀に流されず、面白がる

歴史の勉強、そしてまた翻って自分たちの生き方に反映するという視点で考えた時、歴史が陰謀で動くというのは非常に安直な考え方なのだ、と教えてくれる本です。この考え方はとても役に立ちます。
一方、なぜ陰謀論がそんなに信じられるかというと、エンタメ的には魅力的だからです。スケールの大きな物語を描きたい人は、この本に記された陰謀の数々が大いに役立つでしょう。


【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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