芸術・エンタメの力
今回は本の紹介です。今後もたびたびこういう本を読んでほしい、こういう本が参考になるというものを紹介する回があります。
この回で紹介するのは加東大介『南の島に雪が降る』です。『七人の侍』などで有名な映画俳優の、太平洋戦争のときの戦争体験記です。
ところがこの本、戦場の話は全然出てきません。なのに戦場という窮地に追いやられた人々の生き生きした姿が描かれており、人間観察をしたい人にオススメの本です。
あらすじは動画の中で紹介していますので是非見て欲しいのですが、「なんとか生活できるが未来は見えない状況に追い詰められた主人公たちが、芸術・エンタメの力で生きる活力を取り戻そうとする」話であり、今の私たちにも重なると思いまして紹介しました。
「実録もの」のすすめ
この本を取り上げた理由はもう一つあって、それは「実録ものっていいですよ」という話です。以前エッセイをオススメしましたが、実録ものにはさらに色濃く「人間」が描かれています。世の中にどんな人がいるか、どんな考え方を持っているか、極限状態だと何をするか、というのが実録ものには詰まっていのです。実際どんなエピソードが収録されているかは動画を見て、そして本を読んでのお楽しみです。
「事実は小説よりも奇なりというけれど、こういう事実に小説は勝たなきゃいけない」……ということで、皆さんには頑張っていただきたく思うのです。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。