No. 11「ミョルニル」―ヒロイックな武器! 

榎本海月の連載

雷神のハンマー

ミョルニルは北欧神話の雷神、トールのシンボルにもなっているハンマーだ。北欧神話に登場する他の伝説的な武器のほとんどと同じく、ミョルニルもまたドワーフによって作り上げられたものである。
ミョルニルには数々の能力があった。もちろん振るっても強い武器であったが、特に投げつけて使うイメージが強い。百発百中の命中力を誇った上、相手を討ち果たすと絶対にトールの手に戻ってきた。
こんなエピソードがある。ある時、トールは霜の巨人と一対一の決闘をすることになった。巨人は火打石を持っていて、投げつけようとしてくる。一方のトールもミョルニルを投げる。両者の武器は互いの間でぶつかり合い――勝ったのはミョルニルだった。雷神のハンマーは空中で火打石を打ち砕き、そのまま巨人にぶつかって打ち倒したのである。
他にも、ミョルニルには雷を呼ぶ力もあったという。トールは雷神なのだから自分で呼べば良さそうなものだが、神の力を増幅する能力もあったのだろうか。
そんなミョルニルには問題もあった。尋常でなく重く、かつ熱かったのだ。常人は当然のことながら、トールさえ本人の力ではこれを持ち続けることができない。そこで彼は力を倍化させる帯と、熱さを気にせず持つための金属製の手袋を身につけたという。

エンタメ的ロジック

その武器は強力かつ他用途だが、使いこなすためには別のアイテムが必要だ――というのはいかにも現代エンタメ的なロジックである。この発想はそのまま皆さんの創作に活用できるだろう。強力な武器を使うためにパワードスーツを着込んだり、人間が神のための武器を使うために神属性を得るアイテムを使ったりするのである。また、本来はアイテムがないと使えないはずの武器を、無理矢理そのまま使ってしまう……というのも燃える展開だ。


【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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