No.7 「レーヴァティン」-正体不明の武器

榎本海月の連載

剣か杖か

レーヴァティンは「北欧神話において、神々と戦う巨人・スルトが手にしていた炎の剣」として語られることが多い武器だ。ラグナロク(最終戦争)において世界はスルトの炎によって焼き尽くされるため、この通りであるならレーヴァティンこそ世界を滅ぼした剣ということになる。
ただ、実際の北欧神話ではスルトの剣を「レーヴァティン」と呼んでいないようだ。彼の剣の名は「枝の破滅」。これが神話の別のところに登場するレーヴァティンと意味的に似ているため、両者を同一視する流れが生まれたようだ。
では、レーヴァティンとは何か。名前は破滅や災いを意味するレーヴァと杖あるいは枝の意味であるティンを組み合わせたとも、剣のたとえであるともいう。このような名前から、外見は杖であるとも剣であるともいうが、はっきり確定させる情報はない。神話の中では特別な雄鶏を殺せる唯一の武器で、スルトの妻が持っているとされる。そんなところも、レーヴァティンとスルトを結びつけた理由であろう。
ちなみに、レーヴァティンには別の説もある。スルトはラグナロクにおいて神々のひとりフレイを殺しているが、そのフレイが元々「太陽がきらめく」とされた剣を持っていた。この剣はフレイがある巨人の娘と結婚するために手放しているのだが、回り回ってスルトの手に渡ったのではないか、というわけだ。「太陽」という言葉が炎を連想させるからだろう。

想像の余地あり

レーヴァティンはあやふやな存在であり、それだけに想像の余地が実に多い。そもそも杖なのか、剣なのか。ここはいっそ「どちらでもある」とするのはどうだろうか。普段は杖なのだが、戦う時は炎を纏う。すると長大な炎の剣になる……というのはどうだろう。他にも色々と発想できそうだ。


【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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