No.104 「ファティマのルシア ―聖母マリア3つのメッセージ」

榎本海月の連載

ファティマ第3の秘密

ルシア・デ・ジェズス・ドス・サントスは予言者とは少し違う。しかし、彼女はある非常に有名な予言に関わる人物なので、ここで紹介することにしたい。
第一次世界大戦さなかの1916年、ポルトガルの都市ファティマに暮らす少女だったルシアは、ある日他に2人の少年(フランシスコとジャシンタのマルト兄弟)とともに不思議な出来事に遭遇した。まず現れたのは天使。そして、
イエス・キリストを産んだという聖母マリアまでもが彼女たちの前に現れたのである。
マリアは3つのメッセージを少女たちに託した。ひとつは、地獄が実在する、ということ。もうひとつは「第一次世界大戦はまもなく終わるが、もっと大きな戦争が起きる」こと(この予言は第二次世界大戦として成就する)。そして3つ目のメッセージ(予言)は長い間カトリック教会によって隠されたままになった。世にいう「ファティマ第3の秘密」である。
その後、聖地となったファティマの地には数々の巡礼が訪れ、大聖堂が建てられた。他の2人は早くに亡くなってしまったが、ルシアは修道女になって比較的最近まで生きている。
そして第三の秘密は1960年には公にされるということになっていたがそのまま秘密のままにされた。ハイジャック犯が「第三の秘密を公開せよ」と要求したことさえあるが、それでも公開されなかった。
そんな第三の秘密が公開されたのは2000年で、教皇暗殺の企てを予言したものとされる。しかし、実はそれは偽装で、本物は別にあるのではという意見も根強い……。

あまりにもファンタジックな

ルシアとファティマにまつわるエピソードはあまりにもファンタジックで、もうほとんどそのまま物語のネタにできそうだ。マリアはなぜ3つのメッセージを少女に伝えたのか、第3の秘密は本物なのか……など深く掘り下げようとすればいくらでもできる。もちろん、ファンタジー世界に移し替え、3つのメッセージをもとに大事件が起きたり、隠された秘密を巡った事件を描いたりしてもいいだろう。


【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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