アガスティアの葉
アガスティアは古代インドの神話・伝説に名を残す神仙である。『リグ・ヴェーダ』や『マハーバーラタ』などにも登場する人物だが、ここでは予言者としての彼に注目する。
アガスティアは古代の人でありながら未来に生きる全ての人の運命を見通し、それを弟子による口述筆記で予言書として残した。「アガスティアの葉」である。パルミラ椰子という葉っぱに記されているのでこの名前になった。
今もこの世に存在するアガスティアの葉はあまりにも膨大な情報量であり、しかも古い言葉で記されているので、普通の人では利用することができない。そこで生まれた時から運命で定められかつ訓練を受けた人物である「ナディ・リーダー」が必要になる。いわば専門の司書だが、むしろ巫女に近い存在かもしれない。
リーダーはどのようにして膨大な予言書の中から特定の人間について記された部分にたどり着くのか。まず、アガスティアの葉は108という指紋の種類ごとに整理されているので、ここで大まかな絞り込みができる。その上でリーダーは相手に質問をしてさらに絞り、最終的にたったひとりに限定される、という。
専門技術者の必要な予言
あなたの世界にアガスティアの葉に類する予言書があるなら、遠くからわざわざ出かけて自らの運命を知りたいと望む人もいるだろう。しかし、同じように専門の人しか読み解けないのであれば、何かしらトラブルが起きるかもしれない。
未熟な人物のせいで間違った運命を読んでしまったり、専門の人が誘拐されたり必要な道具が盗まれたりして予言書が開けなくなったりするわけだ。そのようなトラブルの結果として思わぬ事件が起きて、予言書そのものの秘密に迫ってしまう、というのもお話として面白い……。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。